「なぜAWSの請求額が急に増えたんだろう?」と感じているエンジニアや情シス担当者の方は多いのではないでしょうか。AWSはドル建て料金でこそ継続的に値下げを続けていますが、2024年以降は円安の影響に加え、複数の新課金・プラン変更が相次いで発生しています。この記事では、AWSの主な値上げ・料金変更の内容をまとめ、コストを抑えるための対策をわかりやすく解説します。

結論
AWS料金増加の主な原因は3つ
2024年〜 パブリックIPv4アドレスが有料化 → $0.005/時間/IP(月約500円)
2027年1月〜 サポートプラン廃止・変更 → Developer Supportが終了しBusiness Support+(最大9%)に移行
継続中 円安による実質値上げ → ドル建て料金は変わらなくても円換算コストが増加

【一覧表】AWSの主な値上げ・料金変更(2024〜2027年)

まずは直近の主な変更点を表で整理しておきましょう。「なんとなく高くなった気がする」という感覚の正体が見えてくるはずです。

変更内容 時期 影響の目安 対象
パブリックIPv4アドレス有料化 2024年2月1日〜 月約$3.6/IP(約500円) 全サービス(EC2・RDS・ELB等)
サポートプランの廃止・変更 2027年1月1日〜 Developer Supportが終了。Business Support+(最大9%)に移行 Developer/Business/Enterprise On-Rampユーザー
GPU EC2インスタンス値上げ 2026年1月 p5e.48xlarge: $34.61→$39.80/時間(約15%増) AI/ML向けCapacity Blocksユーザー
AWS認定試験の値上げ 2024年4月1日〜 Associate: ¥15,000→¥20,000など 資格受験者
円安による実質値上げ 2022年3月〜継続中 為替レートに応じて変動 日本のAWSユーザー全員

この5つのうち、一般のAWSユーザーに最も影響が大きいのは「IPv4課金」と「サポートプラン変更」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

パブリックIPv4アドレスが有料化、1IPで月500円の追加コスト(2024年2月〜)

2024年2月1日から、AWSが管理するすべてのパブリックIPv4アドレスに対して課金が始まりました。「気づいたら請求が増えていた」という声が多く出た変更です。

なぜIPv4アドレスに課金が始まったのか

AWSは課金開始の理由として、IPv4アドレスは希少なリソースであり、その調達コストが過去5年間で300%以上上昇したことを挙げています。IPv6への移行を促す意図もあるとみられています。

課金単価は1IPアドレスあたり$0.005/時間です。月30日換算で計算すると、

1IPアドレスの月額コスト

$0.005 × 24時間 × 30日 = $3.60/月(約500〜550円 ※レートにより変動)

影響額シミュレーション

Webアプリを運用しているケースで考えてみましょう。EC2に1つ、RDSに1つ、ELBに1つ、合計3つのIPv4アドレスを使っている場合、それだけで月約$10.8(約1,500円)の追加コストが発生します。中規模の構成になればなるほど、積み重なる金額は大きくなります。

対象は非常に広く、EC2、RDS、EKSノード、ALB/NLB、NAT Gatewayなど全サービスのパブリックIPv4アドレスが含まれます。EC2の無料利用枠に限り、最初の12ヶ月間は月750時間分が無料です。

節約策:IPv6移行かIPアドレス数の削減

  • IPv6対応に切り替える:IPv6アドレスは無料のため、可能なサービスからIPv6化するのが根本的な解決策です
  • Elastic IPを解放する:使っていないElastic IPは解放しましょう。使用中でなくても課金されます
  • プライベートIPのみの構成に変更する:VPC内部からしかアクセスしないリソースはパブリックIPを外しましょう
  • Public IP Insightsで可視化する:AWSが提供する無料ツールで、アカウント内のIPアドレス使用状況を一覧確認できます

ヒント:AWS Cost Explorerで「PublicIPv4」フィルターを使うと、現在かかっているIPv4課金を月別で確認できます。まず現状把握から始めてみてください。

AWSサポートプランが大幅変更(2027年1月1日〜)

「サポート料がいつの間にか3倍になる」という変更は、個人開発者から中小企業まで幅広く影響します。2025年12月時点で既に新規申込が停止され、2027年1月1日に既存プランも廃止されます。

廃止されるプランと廃止日

AWS公式ドキュメントによると、以下の3プランが2027年1月1日に廃止されます。

廃止されるプラン 廃止日 移行先
Developer Support 2027年1月1日 Business Support+
Business Support 2027年1月1日 Business Support+
Enterprise On-Ramp 2027年1月1日 Enterprise Support(自動移行)

注意:2025年12月2日以降、Developer Support・Business Supportへの新規加入はすでに停止されています。現在どちらかを使っている方は、2027年1月1日までに対応が必要です。

なお、Enterprise On-Rampは2026年中の契約更新タイミングで自動的にEnterprise Supportへアップグレードされます。Enterprise Supportでは指定TAMの専任化や、15分以内のクリティカル対応SLAなど機能面が向上します。Enterprise On-Rampをご利用中の場合は、自社の契約更新日とコスト変化をAWSの担当者に確認しておきましょう。

Business Support+の新料金体系

移行先となるBusiness Support+の料金はAWS公式の料金ページで確認できます。

月額AWS使用料 Developer Support(旧) Business Support+(新)
〜$10,000 3%(最低$29) 9%(最低$29)
$10,000〜$80,000 3% 7%
$80,000〜$250,000 3% 5%
$250,000超 3% 3%

料金体系の変化を具体的な数字で確認してみましょう。Developer Supportは月額AWS使用料が$967(約14万円)以下なら固定$29でした。Business Support+は$322(約4.8万円)を超えると9%の変動料金が加算されます。

具体的なコスト変化の例

月額AWS利用料が$200(約3万円)の場合:旧Developer Supportで$29→新Business Support+でも$29(変化なし)

月額AWS利用料が$500(約7.5万円)の場合:旧Developer Supportで$29→新Business Support+では$45($500×9%)へ約1.6倍に増加

月額AWS利用料が$900(約13.5万円)の場合:旧Developer Supportで$29→新Business Support+では$81($900×9%)へ約2.8倍に増加

一方で、Business Support+は旧Business Supportより料金が下がっているケースもあります。月額$10,000を超えるような中規模以上の利用では、逆に費用が下がる可能性もあります。

Business Support+で何が変わるのか(機能面)

料金だけ見ると値上げに映りますが、Business Support+はサービス内容も大幅に強化されています。Developer Supportとの主な違いは以下の通りです。

機能 Developer Support(旧) Business Support+(新)
対応時間 営業時間内のみ 24時間365日
問い合わせ手段 メールのみ 電話・チャット・メール
Trusted Advisor 基本チェックのみ 500以上のフルチェック
AI支援(Amazon Q) なし あり(コンテキスト対応)
本番障害対応(SLA) 明確なSLAなし 1時間以内に対応

月額利用料が小さい個人開発者にとっては「費用そのままでサービスが大幅強化された」とも言えます。逆に月額$322(約4.8万円)以上のシステムを運用しているユーザーは実質値上げになるため、Basicサポート(無料)で十分かどうかを改めて見直す良い機会といえます。

2027年1月までにすべき対策

  • サポートが不要なら解約を検討する:Basicサポート(無料)でも、マネージドサービスを中心に使う構成なら問題ない場合も多いです
  • サポートが必要なら早めにBusiness Support+を検討する:自分の月額規模でコストを試算しておきましょう
  • マルチアカウント構成で最適化する:サポートが不要なワークロードは別アカウントに分離し、サポート対象の使用料を削減する手法もあります

GPU EC2インスタンスの価格変更(2026年1月)

AI・機械学習の需要急増を背景に、AWSは2026年1月に高性能GPUインスタンスの価格を引き上げました。

値上がりしたのはどのインスタンス?

The Registerの報道によると、今回の値上げの対象はEC2 Capacity Blocks for ML(MLトレーニング向けの予約制GPU枠)です。

インスタンスタイプ 変更前(/時間) 変更後(/時間) 値上げ幅
p5e.48xlarge(NVIDIA H200×8) $34.61 $39.80 約15%
p5en.48xlarge $36.18 $41.61 約15%

補足:今回の値上げは「EC2 Capacity Blocks for ML」という特定の購入方式に適用されたものです。通常のオンデマンド料金とは異なります。対象は主に大規模なAIモデルトレーニングを行う企業・研究機関です。

AI需要と今後の価格見通し

NVIDIA H200等の最先端GPUは世界的な需要過多の状態が続いており、クラウドプロバイダーにとっても調達コストが上昇傾向にあります。一般ユーザー向けのEC2インスタンスについては、AWSは従来から継続的に価格を下げてきた実績があります。AI向けインスタンスの価格動向は今後も注視が必要でしょう。

円安でAWS利用料が最大27%増になる理由

AWSの利用料金はドル建てで設定されています。そのため、AWSが値上げをしていなくても、円安が進むと日本のユーザーが支払う円建てのコストは自動的に増加します

AWSは「値上げしていない」が実際には…

AWSはサービス開始以降、ドル建ての料金を継続的に値下げし続けています。これは公式にも確認できる事実です。しかし、2022年3月ごろから急激に進んだ円安(一時1ドル=150円超)により、多くの日本企業が実質的なコスト増を体験しました。

ドル円レートが1ドル=110円から140円になると、同じドル建て料金でも約27%のコスト増となります。AWSの値下げ幅より円安の影響が大きければ、結果として請求額は増えます。

注意:円安は今後も続く可能性があります。予算計画を立てる際は、為替変動のリスクを織り込んでおくことをおすすめします。

円安対策として有効なアプローチ

  • リザーブドインスタンス・Savings Plansを前払い購入する:購入時の為替レートで金額が確定するため、その後の円安リスクをヘッジできます
  • AWSリセールサービス(円建て請求)を利用する:国内の再販事業者経由でAWSを利用すると、円建てで支払いができます
  • 不要なリソースの停止・削除を徹底する:円安時は「もったいない」コストが目立ちやすいため、Cost Explorerで定期的に無駄を見直しましょう

今すぐできるAWSコスト削減の対策

「値上げは避けられないが、できる限り支出を抑えたい」という方のために、具体的な対策を3つお伝えします。

① リザーブドインスタンス・Savings Plansの活用

EC2やFargate、LambdaなどをオンデマンドではなくSavings Plansで利用すると、最大72%の割引を受けられます。1年または3年のコミットメントが必要ですが、継続的に使っているリソースがあれば非常に効果的です。

Savings PlansにはCompute Savings Plans(柔軟性が高い)とEC2 Instance Savings Plans(割引率が高い)の2種類があります。AWS Cost Explorerの「Savings Plans 購入分析」機能で、自分のワークロードに最適なプランを提案してもらえます。

② パブリックIPv4アドレスの削減

前述のIPv4課金対策です。AWS Cost Explorerで現状を把握した上で、IPv6対応やプライベートIPのみの構成への切り替えを検討しましょう。複数のIPアドレスを使っているシステムほど、削減効果が出やすいです。

③ AWSリセールサービスの活用

国内のAWSパートナー企業経由でAWSを利用する「リセールサービス」では、円建てで請求を受けられるため為替リスクを回避できます。一部のパートナーでは割引も適用されます。社内の経理・財務部門との調整が必要なケースでも、銀行振込で支払えるメリットがあります。

よくある質問

AWSはなぜ値上げするのですか?

AWSのドル建て料金は基本的に値下げ傾向が続いています。しかし、2024年以降は①希少なIPv4アドレスの調達コスト上昇によるIPv4課金の新設、②AI需要拡大に伴うGPUインスタンスの需給逼迫、③円安による実質的なコスト増加、④サポートプランの再編という4つの要因が重なり、多くのユーザーが実質的なコスト増を感じる状況になっています。

AWS認定試験の料金も値上がりしましたか?

はい。2024年4月1日から、AWS認定試験の受験料が円安を反映して改定されています。Foundational(クラウドプラクティショナー等)は¥11,000→¥15,000、Associate(SAA等)は¥15,000→¥20,000、Professional・Specialtyは¥30,000→¥40,000となりました。なお、合格者特典で次回受験が半額になる制度は継続しています。

Developer Supportを使っています。今すぐ対応が必要ですか?

すぐに対応が必要なわけではありませんが、早めに方針を決めておくことをおすすめします。Developer SupportおよびBusiness Supportは2025年12月2日以降、新規加入が停止されました。2027年1月1日まで既存プランは継続利用できますが、その後は自動的にBusiness Support+に移行するか、サポートなしの「Basicサポート(無料)」に切り替えることになります。サポートが必要かどうかを見直した上で、Business Support+のコストを試算しておきましょう。

AWSの料金をチェックする方法はありますか?

AWSコンソールの「Cost Explorer」を使うと、サービスごと・日ごとの料金内訳を確認できます。また、「AWS Budgets」では月額予算を設定して超過しそうになったらアラートを受け取ることができます。無料枠の残量確認は「Billing & Cost Management」ダッシュボードから行えます。

まとめ

AWS値上げ・料金変更のポイント

  • IPv4課金(2024年2月〜):1IPアドレスあたり月約$3.6。全サービス対象のため、使っているIP数の確認が急務
  • サポートプラン変更(2027年1月〜):Developer Supportが廃止。Business Support+では月額使用料の最大9%が課金される。2026年中に対応方針を決めよう
  • GPU EC2値上げ(2026年1月):AI/ML向けCapacity Blocksが約15%値上げ。対象は大規模MLトレーニングユーザー
  • 円安の影響(継続中):AWSはドル建て料金の値下げを続けているが、円安が続く間は円換算コストが増加する構造
  • 対策の優先順位:①不要なIPv4アドレスの削減 ②Savings Plans/RI活用(最大72%割引)③リセールサービスで円建て化

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