日本ペイントのシンナーが2026年に入って急騰しています。3月には最大75%という衝撃的な値上げが発表され、外壁塗装や板金塗装の現場を直撃しました。この記事では、2025年7月から始まった3段階の値上げ経緯・背景・実勢価格の実態、そして施主や業者がいま取れる対策をまとめています。

結論
2026年3月から建築用シンナーが最大75%値上げ——3か月で3回の連続改定

日本ペイントは2025年7月(10〜20%)、2026年3月(シンナー最大75%)、2026年6月(溶剤系25〜35%・水性20〜30%)と、約1年で計3回の価格改定を実施しています。背景にあるのはホルムズ海峡の事実上の封鎖によるナフサ不足で、公式値上げ率75%に対し市場の実勢価格はすでに3.75倍超まで高騰しているケースもあります。

日本ペイント シンナー値上げ一覧(2025〜2026年)

日本ペイントは2025年から2026年にかけて、公式発表をもとに計3回の価格改定を実施しました。同一メーカーが3か月で3回連続して改定するのは業界でも異例の事態です。

1 第1波:2025年7月22日出荷分〜
+10〜20%
対象:塗料・シンナー類全般。原材料価格の高止まり・物流コスト上昇・エネルギーコスト高騰が理由。2025年5月16日発表。
2 第2波:2026年3月19日発注分〜
+50〜最大75%
対象:建築用・自動車補修用シンナー製品。ホルムズ海峡の事実上の封鎖によるナフサ急騰が主因。4月17日13時以降、下塗材の受注も一時停止。
3 第3波:2026年6月1日出荷分〜
溶剤系+25〜35% 水性+20〜30%
第2波から3か月も経たないうちの再改定。直送運賃の改定も同時実施。リフォーム産業新聞が2026年5月18日に報道。

第1波:2025年7月22日出荷分〜(10〜20%)

2025年5月16日に日本ペイントが公式発表した第1波は、塗料・シンナー類を対象に10〜20%の値上げでした。この時点での理由は「原材料価格の高止まり・物流コスト上昇・エネルギーコスト高騰」と説明されており、業界全体で見られた一般的なコストプッシュ型の値上げです。

2024〜2025年にかけて値上げが一時落ち着いていた塗料市場でしたが、この第1波が大きな波の始まりとなりました。

第2波:2026年3月19日発注分〜(シンナー75%)

2026年3月に発表された第2波は、建築用・自動車補修用シンナーが最大75%という前例のない値上げ幅となりました。ホルムズ海峡の事実上の封鎖でナフサの調達が困難になったことが直接の引き金です。4月17日13時以降は下塗材の受注を一時停止するほど供給が逼迫しており、現場への影響は想像を超えるものでした。

第3波:2026年6月1日出荷分〜(溶剤系25〜35%・水性20〜30%)

第2波の発表から3か月も経たない段階で、リフォーム産業新聞(2026年5月18日報道)によると溶剤系塗料が25〜35%、水性塗料が20〜30%の追加値上げが決定しました。2026年6月1日出荷分からの適用で、直送運賃の改定も同時に行われます。水性塗料は「水で薄めるためシンナー急騰の直接影響を受けない」と思われがちですが、製造コスト・輸送コストの上昇分がここで反映されている形です。

実施日 対象 値上げ率
第1波 2025年7月22日出荷〜 塗料・シンナー類全般 10〜20%
第2波 2026年3月19日発注〜 建築用・自動車補修用シンナー 50〜75%
第3波 2026年6月1日出荷〜 溶剤系塗料 25〜35%
第3波 2026年6月1日出荷〜 水性塗料 20〜30%

なぜ75%も値上がりした?ホルムズ海峡→ナフサ→シンナーの連鎖

「なぜシンナーがここまで値上がりしたのか」を理解するには、ホルムズ海峡→ナフサ→シンナーという連鎖を把握することが重要です。一見遠い地政学的な出来事が、塗装工事の費用に直結している構造です。

ホルムズ海峡
事実上の封鎖
中東産ナフサの
供給ストップ
ナフサ在庫が
約20日分のみ
シンナー原料
の高騰・不足
最大75%
値上げ

ホルムズ海峡封鎖のきっかけ

2026年2月28日、米国・イスラエルによるイランへの攻撃を機に、ホルムズ海峡の通航が事実上困難になりました。2026年4月22日にはイランの革命防衛隊が外国船2隻を拿捕し、通航船が12時間でわずか1隻(平時は130隻程度)にまで落ち込むほど海峡は麻痺しました。

日本のナフサはなぜリスクが高いか

シンナーの主原料はナフサ(原油を蒸留して得られる液体石化原料)です。日本は中東産ナフサへの依存度が高く、帝国データバンクの調査では約4万7,000社の製造業がナフサ調達リスクにさらされているとされています。さらに深刻なのが民間のナフサ在庫が約20日分しかないという事実です。石油とは異なり「国家備蓄制度」が設けられていないため、供給が途絶えると一気に枯渇する構造になっています。

水性塗料とシンナーの違い

水性塗料は希釈に水を使うため、シンナー急騰の直接的な影響は受けません。ただし、水性塗料であっても製造工程でナフサ由来の原料を使うケースがあり、今回の第3波ではその分が価格に反映されています。「水性に切り替えれば値上げを避けられる」というわけではないことは念頭に置いておく必要があります。

補足: ナフサはシンナーだけでなく、プラスチック・合成繊維・塗料の樹脂成分など幅広い化学品の原料です。自動車・建材・電子機器など多くの産業に波及していますが、とりわけシンナーは「ナフサをほぼ直接使う」製品のため値上がり幅が大きくなっています。

公式値上げ率75%なのに、なぜ現場では3.75倍になるのか?

日本ペイントの公式発表は「最大75%値上げ」ですが、実際の市場では公式数字をはるかに上回る価格高騰が起きています。値上がりの「本当の規模感」を知っておきましょう。

従来価格(1缶)
約4,000円
現在の実勢(1缶)
15,000円超〜

板金塗装業者・株式会社イケウチの2026年4月の報告によると、従来約4,000円だったシンナー1缶が15,000〜16,000円超まで上昇しています。公式発表の75%に対し、実勢では約275%上昇(3.75倍)という乖離が生じているのです。

なぜこれほど乖離するのでしょうか。メーカーは認定施工店ルートへ優先供給しているため、一般流通向けの在庫が逼迫します。不足した分を補おうとする事業者が高値でも買い付けることで、市場価格が需給プレミアムつきでさらに跳ね上がる——という構造です。モノタロウや楽天市場でもラッカーシンナー3.6kg〜4L缶が1万円台前半〜中盤で取引されている状況が確認されています。

以下は、市販の家庭用・DIY向けシンナー・うすめ液製品の価格推移です。プライシーの価格チャートで実際の値動きを確認してみてください。

注意: 上記は家庭用・DIY向け市販品の価格参考です。建築現場や板金塗装で使う業務用シンナーの実勢価格は、さらに高い場合があります。

外壁塗装・自動車修理費への影響

シンナーの値上がりは、外壁塗装工事や自動車修理の費用として施主・オーナーに直接跳ね返ってきます。実際どのくらい上がっているのか確認しておきましょう。

外壁塗装費用への影響

「シンナーが75%値上げ=工事費が75%上がる」と思ってしまう方も多いですが、実際はそうではありません。外壁塗装の総費用に占める塗料代の割合は15〜20%程度で、残りは人件費・足場代・諸経費です。塗料が10%値上がりしても、総費用の上昇は1.5〜2%程度にとどまります。

とはいえ実際の試算では、複数の塗装業者のブログや見積もり事例をもとにすると、外壁塗装(外壁のみ)で約113万円→約127万円(+約14万円)、外壁と屋根のセット工事では約128万円→約142.5万円(+約14.5万円)という変化が報告されています。30坪前後の住宅では+15〜25万円の負担増が目安とされています。塗料代だけでなく、溶剤不足の影響で職人の作業効率が下がる分や、納期遅れによる工期延長コストも上乗せされているためです。

塗料のグレード(シリコン・フッ素・無機等)や施工会社によって変動幅は大きく異なります。「いくら増えるか」はあくまで目安として捉え、複数社から見積もりを取って比較することを強くおすすめします。

注意: 2026年6月1日の第3波が施行されると、水性塗料を使った工事にも追加の値上げが反映されます。2026年5月以前に取得した見積書と、6月以降の見積書では金額が変わる可能性があります。

自動車修理費(板金塗装)への影響

板金塗装ではシンナーを「希釈用(塗料の粘度調整)」と「洗浄用(スプレーガンの洗浄)」の2つの用途で大量に消費します。株式会社イケウチの2026年4月の報告では、全塗装・パネル塗装のコストが大幅に上昇し、部分塗装(ピンポイント補修)の需要が増加見込みと分析しています。

なお、東京商工リサーチによると2025年度の塗装工事業の倒産は前年比22.2%増の143件で過去20年で最多となっており、業界全体が深刻な状況に置かれています。こうした業者の倒産が続くと、施工会社の選択肢が減り、かえって工事費が上がるリスクもあります。

他メーカーの動き〜日本ペイントが引き金に

日本ペイントの値上げは、業界全体へ波及しています。日本の塗料市場では「最大手が動けば他社も追随する」構造があり、まさにその流れが起きています。

メーカー シンナー値上げ率 実施日 備考
日本ペイント 最大75% 2026年3月19日発注〜 第2波。下塗材受注一時停止あり
関西ペイント 50%以上 2026年4月13日出荷〜 出荷数量制限(前年4月度実績を上限)あり
アステックペイント 70% 2026年5月25日受注〜 油性15〜25%・水性15〜20%も同時改定
大信ペイント 60〜70% 2026年4月1日出荷〜
エスケー化研 (溶剤系20〜30%) 2026年4月21日出荷〜 水性は5月11日〜、15〜25%
ロックペイント 30%以上 2026年4月1日出荷〜 3月25日出荷分より出荷量制限も実施

関西ペイント:シンナー50%超(4月13日〜)

関西ペイントは公式サイトで2026年4月13日(月)以降出荷分からシンナー類を50%以上値上げすると発表しています。さらに、昨年4月度の出荷実績を上限とする数量制限も実施しており、「値上がり」と「量の確保」の両方で施工業者を苦しめています。

エスケー化研:溶剤20〜30%(4月21日〜)・水性15〜25%(5月11日〜)

エスケー化研の公式文書によると、溶剤系塗料は2026年4月21日(火)出荷分から20〜30%、水性塗料は5月11日(月)出荷分から15〜25%の値上げです。他メーカーに比べてシンナー単体の値上げ率はやや低めですが、塗料本体への波及も含まれています。

アステックペイント:シンナー70%(5月25日受注分〜)

施工現場の情報によると、アステックペイントは2026年5月25日受注分からシンナーを70%値上げします。油性塗料15〜25%・水性塗料15〜20%の値上げも同時に行われます。日本ペイントの第2波発表から約2か月遅れての追随となりました。

今後の見通し〜値下がりは期待できるか?

「シンナーの値上げが落ち着けば、工事費も下がるのでは?」という期待を持つ方も多いと思います。しかし現実は、かなり厳しい見通しです。

過去25年、塗料が値下がりしたことはゼロ

施工歴25年のベテラン職人の証言によると、2001年以降の25年間で塗料価格が実際に値下がりしたことは一度もないとのことです。値上げの波は何度もあっても、値下がりはゼロ。塗料に限らず、加工品の価格には「ロケットと羽(Rockets and Feathers)」と呼ばれる経済現象があります——原材料コストが上がれば価格はロケットのように素早く上がるが、コストが下がっても価格は羽のようにゆっくりとしか下がらない、という構造です。

首相発言と現場の温度差

2026年4月30日、高市首相は「ナフサ由来化学品の代替調達が進み、年を越えて供給継続できる」と発言しました。ただし、現場の感覚は異なります。価格が改定済みの塗料在庫の流通入れ替えには通常6か月以上かかると言われており、たとえナフサ調達が正常化しても、すぐに価格が下がる構造にはなっていません。

まとめ: 短期(2026年内)での値下がりは現実的ではありません。中期的(2027年以降)にナフサ供給が正常化した場合でも、値上がり前の水準に戻ることはほぼ期待できません。外壁塗装を検討している方は「これ以上上がる前に」という視点が現実的です。

施主・業者がいま取れる対策

値上がりが続くなか、施主(依頼する側)と業者(施工する側)それぞれが取れる対策を整理しました。

施主(外壁塗装を依頼する方)

  • 見積書に塗料のメーカー名・製品名が記載されているか確認する:記載があると、どの値上げが影響するか自分で照合できます。
  • 2026年3月以前の見積もりは再見積もりを依頼する:第2波(3月19日発注〜)の前後で大きく金額が変わるため、古い見積もりをそのまま使うのは危険です。
  • 自治体の助成金・補助金を活用する外壁塗装で市区町村の助成金が使えるケースがあります。工事前に居住地の助成金制度を確認しましょう。
  • 水性塗料への変更を検討する:水性はシンナー急騰の直接影響は小さいですが、第3波(6月〜)で水性も値上がりしている点は注意が必要です。

「値上がりするから今月中に契約を」という業者に注意

シンナー値上げを理由に契約を急かす業者が増えています。注意すべきポイントは2つです。①「今月中に契約すれば旧価格」という言葉は実態と乖離しているケースがあります。実際の施工が翌月以降になれば値上げ後の塗料を使うことになり、契約日と塗料仕入れ日は別です。②値上げ後に「安すぎる見積もり」を出してくる業者は、塗料を薄める・工程を省略するなどで利益を確保しようとしている可能性があります。値上がり後だからこそ、安い見積もりは手抜きのサインです。複数社から見積もりを取り、内訳を比較することが重要です。

板金・塗装業者の方

  • 部分塗装(ピンポイント補修)で顧客コストを圧縮する:全塗装より部分塗装で提案することで、シンナー消費量を抑えられます。
  • 水性塗料・UV硬化塗料など代替工法の習得:シンナーを使わない工法への移行は、長期的なコスト安定につながります。
  • 早期発注・まとめ発注で在庫を確保する:メーカーの数量制限がかかっている今、優先ルートで調達できるかどうかが経営上の差になります。

プライシーでは塗料関連商品や建材の価格推移チェックもできます。市販品の値動きをモニタリングすることで、業務用の相場感の把握にも役立ちます。

よくある質問

日本ペイントのシンナー値上げはいつからですか?

3段階で実施されています。第1波は2025年7月22日出荷分(10〜20%)、第2波は2026年3月19日発注分(建築・自動車補修用シンナー最大75%)、第3波は2026年6月1日出荷分(溶剤系25〜35%・水性20〜30%)です。

なぜ75%も値上げしたのですか?

ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、シンナーの主原料であるナフサ(中東産)の調達が困難になったためです。日本の民間ナフサ在庫は約20日分しかなく、供給不安が一気に価格に転嫁されました。

外壁塗装費用はどのくらい上がりますか?

30坪前後の住宅では+15〜25万円の負担増が目安とされています。塗料グレードや施工会社によって異なるため、複数社から見積もりを取ることをおすすめします。なお、2026年6月以降はさらに追加値上げが反映される予定です。

今後値下がりする可能性はありますか?

短期的には見込みにくい状況です。過去25年で塗料が実際に値下がりした事例はなく、流通在庫の入れ替えには通常6か月以上かかるとされています。ナフサ供給が正常化したとしても、値上がり前の水準に戻ることはほぼ期待できません。

他のメーカーも値上げしていますか?

はい、業界全体で追随値上げが起きています。関西ペイント(シンナー50%超・4月13日〜)、アステックペイント(シンナー70%・5月25日〜)、大信ペイント(シンナー60〜70%・4月1日〜)、エスケー化研(溶剤系20〜30%・4月21日〜)などが値上げを発表しています。

この記事のまとめ

  • 日本ペイントは2025〜2026年で計3回の値上げ。第2波(2026年3月)でシンナーが最大75%という前例のない値上げ幅に
  • 背景はホルムズ海峡封鎖→ナフサ供給不安→シンナー原料高騰という連鎖。民間在庫が約20日分しかないことが致命的だった
  • 公式75%に対し実勢価格は約3.75倍まで高騰。メーカーが認定施工店へ優先供給する中で一般流通価格が跳ね上がっている
  • 外壁塗装は30坪前後で+15〜25万円の目安。2026年6月の第3波でさらなる上昇が見込まれる
  • 関西ペイント・アステックペイント・エスケー化研など主要メーカーも軒並み追随値上げ
  • 短期の値下がりは現実的でない。外壁塗装は複数社見積もり+助成金活用で備えを

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