「シンナーが急に高くなった」「ホームセンターで棚から消えている」という声が全国から届いています。2026年3月以降、塗料大手メーカー各社がシンナー製品を最大75〜80%値上げしており、その背景には中東情勢による深刻な原材料不足があります。この記事では、いつから・いくら値上がりしたのかをメーカー別に整理し、今後の見通しと私たちへの影響・対策をわかりやすく解説します。

結論
シンナーは2026年3〜5月にかけて、主要メーカーが一斉に50〜80%値上げ

主な原因はホルムズ海峡の事実上の封鎖によるナフサ(石油化学原料)の供給不足です。現場の実勢価格は公式値上げ率を大幅に上回り、1缶4,000円前後だったシンナーが15,000円超で取引されるケースも出ています。過去に塗料が値下がりした事例はなく、当面はこの水準が続く見込みです。

シンナーはいつからいくら値上がりしたか

2026年に入り、外壁塗装や自動車補修に使われるシンナー製品が異例のスピードで値上がりしています。国内の主要塗料メーカーはいずれも「原材料調達困難」を理由に価格改定を実施しました。まずはメーカー別の値上げ幅と時期を整理しておきましょう。

主要メーカー4社の値上げ率一覧

日本ペイント
75%
3月19日発注分〜
エスケー化研
20〜30%
溶剤系:4月21日〜
関西ペイント
50%超
4月13日出荷分〜
大信ペイント
60〜70%
4月1日出荷分〜
メーカー シンナー値上げ率 値上げ開始日 塗料本体への波及
日本ペイント 最大75% 2026年3月19日発注分〜 10〜20%(4月16日出荷分〜)
関西ペイント 50%超 2026年4月13日出荷分〜 出荷量制限も同時実施
エスケー化研 20〜30%(溶剤系) 2026年4月21日〜 水性15〜25%(5月11日〜)
大信ペイント 60〜70% 2026年4月1日出荷分〜

注目:現場の実勢価格は公式値上げ率をさらに超えています

メーカーが発表した値上げ率はあくまで「最低ライン」です。流通経路の逼迫により、これまで1缶4,000円前後だったシンナーが、市場で15,000円超(約3.75倍)で取引されるケースが報告されています(PR TIMES・イケウチ調べ)。

【最新】日本ペイント、6月1日から塗料製品全般を値上げ

日本ペイントは2026年5月13日に発表し、6月1日出荷分より塗料製品全般の価格改定と直送運賃の改定を行います。シンナーだけでなく、塗料本体の追加値上げが重なるため、外壁塗装工事費用への影響はさらに広がる見込みです。

日本ペイント — シンナー75%(3月19日〜)

国内最大手の日本ペイントは、2026年3月25日に発表し、3月19日発注分からシンナー製品を最大75%値上げしました。業界全体への値上げ波及の起点となった値上げです。さらに4月16日出荷分からは塗料本体も10〜20%の価格改定を実施しています。過去の日本ペイントの値上げは「数〜10%程度」が通常でしたが、今回の規模は明らかに異次元と言えるでしょう。

関西ペイント — 50%超(4月13日〜)・出荷量制限あり

関西ペイントは2026年4月2日に公式発表し、4月13日出荷分からシンナー類を50%超値上げしました。特筆すべきは価格改定だけでなく出荷量の制限も同時実施されている点です。「そもそも入手できるか」という問題が生じており、価格の問題を超えた供給危機になっています。

エスケー化研 — 溶剤系20〜30%(4月21日〜)・水性15〜25%(5月11日〜)

エスケー化研の注目点は、値上げが2段階に分かれていることです。4月21日に溶剤系塗料20〜30%が先行し、続いて5月11日に水性塗料15〜25%の値上げが実施されました。「水性塗料に切り替えればシンナー値上げの影響を避けられる」という判断が成立しなくなったことを意味します。

大信ペイント — 60〜70%(4月1日〜)

中堅メーカーの大信ペイントも4月1日出荷分から60〜70%という大幅な値上げを実施。3大手と同水準の値上げが中堅メーカーでも起きているのは、今回の原材料高騰が業界全体に均等に作用していることを示しています。「3大手だけの特殊な動き」ではないのです。

なぜシンナーが急に値上がりしているのか—仕組みをわかりやすく解説

「なぜいきなり75%も?」と驚かれた方も多いと思います。結論から言えば、シンナーの原料となるナフサ(石油化学原料)の供給が中東情勢で突然断ち切られたことが主因です。連鎖の仕組みを整理しましょう。

そもそもシンナーはなぜ必要か—2つの役割

シンナーが値上がりすると「それほど困らないのでは」と感じる方もいるかもしれませんが、塗装現場においてシンナーは欠かせない必需品です。主な用途は2つに分かれます。

  • 希釈用シンナー: 油性塗料の粘度を調整し、スプレーガンやローラーで均一に塗れるよう塗料に混ぜる。希釈率を誤ると塗膜不良(ゆず肌・白化)が起きる。
  • 洗浄用シンナー: 塗装後にスプレーガンや刷毛など精密機材に残った塗料を洗い落とす。1日に何度も繰り返す作業のため、使用量が多くなりやすい。

どちらも省くことができない工程であり、「使う量を減らせばいい」と簡単に対応できないのが現場の実情です。

シンナーの原料はナフサ(石油由来)

塗料用シンナーや自動車補修用のラッカーシンナーは、石油を精製するときに得られるナフサ(粗製ガソリン)を原料として作られます。ナフサは石油化学製品全般の基礎原料であり、プラスチック・合成繊維・塗料など幅広い製品に使われています。

中東産原油
ナフサ(粗製ガソリン)
芳香族系溶剤
シンナー

ホルムズ海峡の事実上の封鎖がナフサ供給を直撃

2026年2月末から本格化した中東情勢の悪化により、ホルムズ海峡(ペルシャ湾の出口)が事実上の封鎖状態に陥りました。日本の原油輸入の約93%がこのホルムズ海峡を経由しており、国内への原油供給が急減しました。

ナフサの国際相場はわずか2週間で1トンあたり600ドル台後半から1,100ドル前後へ急騰(BSRweb調べ)。国内の石油化学プラントもナフサ不足で減産体制に追い込まれ、シンナー製造に必要な原材料の調達が著しく困難になりました。

ホルムズ海峡とは?

ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約50kmの海峡。世界の原油輸送の約2割がここを通過しており、日本にとっては中東原油の大動脈です。2026年2月末から商船への攻撃が相次ぎ、大手邦船3社が通航を停止しました。

歴史的円安が輸入コストをさらに押し上げた

さらにダブルパンチとなっているのが円安です。ナフサの取引は米ドル建てで行われるため、2026年4月時点で1ドル=158〜159円台という歴史的な円安水準が、輸入コストをさらに押し上げています。ナフサの高騰に円安が重なり、数年前と比べて輸入コストが40%以上跳ね上がった状態が固定化しつつあります。

今後も値上がりは続くのか?いつ値下がりするのか

「いつか元の価格に戻るのでは?」と期待したい気持ちはよくわかります。しかし、現実は厳しいものがあります。

過去25年で塗料価格が値下がりした事例はゼロ

施工歴25年の現場職人の証言によると、日本の主要塗料メーカー5社(日本ペイント・関西ペイント・エスケー化研・菊水化学工業・アイカ工業)が公式に塗料製品の値下げを発表した事例は、過去25年で一件も確認されていません。塗料価格は「上がったり下がったりする波」ではなく、「一段ずつ上がる階段」のような構造なのです。

2022年以降の塗料値上げの歴史を振り返ると、2022年に10〜15%、2023年にさらに5〜10%と段階的に上昇してきましたが、その後も値下げされた事例はゼロです。経済学では「ロケットと羽根(価格は上がる時はロケット、下がる時は羽根のように遅い)」として知られる現象です。

中東情勢の最新動向と原油価格の見通し

2026年4月18日にイラン外相が「ホルムズ海峡の完全再開」を発表し、一時的に緊張緩和の期待が高まりました。しかしわずか4日後の4月22日、イラン革命防衛隊が外国船2隻を拿捕し、12時間で通過した船舶は1隻のみ(平時は1日約130隻)という状況に逆戻り。原油価格も再上昇しました。

仮に今後中東情勢が落ち着き原油価格が下落したとしても、すでに価格改定済みのシンナー・塗料が元の価格に戻ることは、過去の事例から考えて極めて考えにくい状況です。

今すぐ動くべき人
  • 外壁塗装の工事を検討中の方
  • シンナーをまとめ買いしたい業者
  • DIYで塗装を予定している方
  • 見積もりを複数業者で比較中の方
待って損する可能性が高い
  • 値下がりを期待して工事を先延ばし
  • 材料入手が難しくなる前に確保を後回し
  • 在庫がある業者を選ばず価格だけで比較

シンナー値上げで何が困る?外壁塗装・DIY・自動車補修への影響

今回のシンナー値上げは、外壁塗装を依頼する施主だけでなく、DIYユーザーや自動車補修の現場にまで幅広く影響しています。自分にとってどのような影響があるかを確認しておきましょう。

外壁塗装の見積もりが高くなる・工期遅延のリスク

外壁塗装を検討している方にとって最も身近な影響は、工事費用の上昇と材料調達の遅延です。シンナーの値上げは油性塗料(溶剤系塗料)を使う工事のコストを直撃します。見積もり金額が以前より高いのは便乗値上げではなく、実際に原材料コストが上がっているためです。

さらに深刻なのが「材料が手に入らない問題」です。関西ペイントなどは価格改定に加えて出荷量の制限を実施しており、「希望の塗料が入荷時期未定」「工事が延期になる」というケースも現実に起きています。業者選びでは価格だけでなく、認定施工店ルートで材料を確保できるかも重要なポイントになっています。

施主が業者に確認したい3つのこと

① 見積もりは現在の実勢仕入れ価格ベースか
② 工事着工までに価格再改定の可能性があるか(契約書の追加請求条項を確認)
③ 認定施工店ルートで材料を安定的に確保できるか

ホームセンターで品薄・購入制限が発生(DIY・家庭用)

DIYや家庭でシンナーを使っている方も影響を受けています。全国のホームセンターで「お一人様1缶まで」「入荷時期未定」という貼り紙が相次いでおり、棚から商品が消えているケースが報告されています。

通販サイトでも、関西ペイント製シンナーの次回出荷予定が「2026年6月下旬」と案内されるなど、品薄状態が続いています。価格も2026年5月時点でラッカーシンナー3.6〜4L缶が1万円台前半〜中盤で取引されており、以前の価格感とはかけ離れた状況です。

自動車板金塗装現場への影響

車の板金塗装を行う自動車補修工場でも深刻な影響が出ています。スプレーガンの洗浄や塗装前の脱脂にシンナーは欠かせない存在ですが、使用量削減のプレッシャーが強まっています。シンナー量を絞ってガンを洗浄すると、前の塗色の微粒子が次の塗色に混入するリスクが高まるため、品質と節約の板挟みになっている現場も多いとのことです。

業界全体への打撃は数字にも表れています。東京商工リサーチによると、2025年度の塗装工事業の倒産件数は143件(前年度比22.2%増)と、過去20年で最多・23年ぶりの高水準を記録しました。今回のシンナー急騰がこの流れを加速させるリスクが懸念されています。

シンナー値上げへの対策と代替手段

「高くなったから仕方ない」で終わらせず、できる対策を取っておきましょう。目的に応じた対応策を整理します。

水性塗料への切り替えが現実的な対策

外壁塗装や家庭DIYで最もわかりやすい対策は、水性塗料へのシフトです。水性塗料は水で希釈するため、シンナーは基本的に不要です。日本ペイントの75%値上げを直接受けるのは油性塗料(溶剤系)であり、水性塗料への切り替えでこの直撃を避けられます。

ただし注意点もあります。エスケー化研が2026年5月11日に水性塗料も15〜25%値上げしたように、水性塗料も樹脂原料のナフサ依存度が高く、間接的な値上げを受けています。「水性なら安心」ではなく、「油性ほど影響は大きくない」という正確な理解が大切です。

無希釈・弱溶剤塗料の活用

外壁塗装の現場では、シンナー使用量を最小限に抑えられる無希釈タイプや弱溶剤塗料の採用が広がっています。弱溶剤塗料はシンナーが少量で済み、強溶剤塗料と比べて値上げの影響が相対的に小さくなります。業者に相談する際に選択肢として提案してみましょう。

外壁塗装を依頼するなら動くべきタイミング

過去の値上げ事例を踏まえると、シンナー・塗料が値下がりする可能性は極めて低い状況です。今後の供給制限が長期化すれば、工事そのものができなくなるリスクも考えられます。もし外壁塗装を検討しているなら、複数業者から見積もりを取り、材料の入手状況を確認した上で早めに動くのが現実的な判断です。

プライシーアプリでは塗料関連商品の価格推移チャートを確認できます。ぜひ参考にしてみてください。

よくある質問

ホルムズ海峡の封鎖によりシンナーの原料となるナフサの供給が急減したため、メーカーが出荷量を制限しています。大手塗料メーカーが「認定施工店優先供給」を実施しているため、一般流通向けの在庫が逼迫し、ホームセンターの棚から商品が消える状況が起きています。購入制限(一人1缶まで等)を実施している店舗も多く、当面は品薄状態が続く見込みです。

用途によって代替品は異なります。刷毛・ローラーの洗浄が目的なら、水性塗料対応の専用「刷毛洗浄剤」が比較的入手しやすく、臭いも少なくなっています。DIYで壁を塗る場合は水性塗料への切り替えが最も現実的です。ただし、油性塗料の本来の希釈・塗装用途でシンナーを完全に代替できる製品はなく、用途に応じた専用品を選ぶ必要があります。

2026年3〜5月にかけて主要メーカーが一斉に50〜80%のシンナー値上げを実施したのは事実であり、業者の説明は事実に基づいています。ただし、公式値上げ率を大幅に超えた「過剰上乗せ」が行われていないかは確認が必要です。複数の業者から見積もりを取り、使用塗料のメーカー・品番と値上げ時期の整合性を確認することをおすすめします。

シンナー値上げの直接的な影響(希釈剤コストの急騰)は受けません。しかし水性塗料の樹脂原料もナフサ由来のものが多く、エスケー化研が2026年5月11日に水性塗料を15〜25%値上げしたように、間接的な値上がりは起きています。油性塗料ほどの衝撃ではありませんが、水性塗料だからといって完全に無関係とは言えない状況です。

現時点では値下がりを期待するのは難しい状況です。過去25年で主要塗料メーカーによる公式値下げ事例はゼロです。仮に中東情勢が落ち着いて原油価格が下落したとしても、一度改定された出荷価格が元に戻るには相当の時間がかかります。また流通在庫の入れ替えには通常6ヶ月以上かかるため、値下がりが現場に届くのはさらに後になります。

まとめ:シンナー値上げのポイント

2026年シンナー値上げまとめ

  • 日本ペイントが3月19日〜75%値上げを皮切りに、各メーカーが一斉に50〜80%のシンナー値上げを実施
  • 原因はホルムズ海峡の事実上の封鎖によるナフサ供給断絶+歴史的円安のダブルパンチ
  • 現場の実勢価格は公式値上げ率を超え、1缶4,000円→15,000円超(約3.75倍)のケースも
  • 過去25年で塗料の公式値下げ事例はゼロ。「下がるまで待つ」戦略は現実的ではない
  • 外壁塗装を検討中なら今すぐ複数業者で見積比較・材料調達状況の確認を
  • DIYユーザーは水性塗料・刷毛洗浄剤への切り替えが実用的な代替策

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