税金は社会保障(年金・医療・介護・子育て支援)に最も多く使われており、歳出全体の33.2%を占めています(令和7年度予算)。一方で会計検査院は毎年、不正受給や補助金の過大交付などを「指摘金額」として公表しており、最新の令和6年度(2024年度)分は約540億円にのぼりました。ただし、会計検査院自身はこれを公式に「無駄遣い」と呼んでいるわけではない点には注意が必要です。
税金の使い道は?内訳をわかりやすく解説
まずは税金がどこにどれだけ使われているのか、全体像から見ていきましょう。
国税と地方税の違い
私たちが納めている税金は、大きく分けて国に納める「国税」と、都道府県・市区町村に納める「地方税」の2種類があります。所得税・法人税・消費税・相続税などが国税、住民税・固定資産税・自動車税などが地方税にあたります。この記事では、国全体の予算の使い道が公表されている「国税(国の一般会計)」の使い道を中心に解説します。
一番多いのは社会保障(年金・医療・介護・子育て)
財務省が公表している令和7年度一般会計予算の資料によると、歳出総額115兆1,978億円のうち、最も大きな割合を占めているのが社会保障関係費で、38兆2,938億円(33.2%)です。国債費や地方交付税交付金等を除いた「一般歳出」だけで見ると、社会保障関係費の割合は56.2%にまで上がります。
| 費目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|
| 社会保障関係費 | 38兆2,938億円 | 33.2% |
| 国債費 | 28兆2,179億円 | 24.5% |
| 地方交付税交付金等 | 18兆8,728億円 | 16.4% |
| 防衛関係費 | 8兆6,691億円 | 7.5% |
| 公共事業関係費 | 6兆858億円 | 5.3% |
| 文教及び科学振興費 | 5兆6,560億円 | 4.9% |
| その他 | 9兆4,025億円 | 8.2% |
出典:財務省「令和7年度一般会計予算 歳出・歳入の構成」(2026年7月21日確認)
社会保障関係費はさらに、年金・医療・介護・生活保護・子ども子育て支援の5分野に分かれています。少子高齢化が進む日本では年金や医療にかかる費用は今後も増加が見込まれており、厚生年金保険料の値上げなど私たちの手取りに直結する制度変更も続いています。
医療についても、窓口負担割合の見直しなど社会保障費の増加が私たちの家計に跳ね返ってくる場面が増えています。
国債費・地方交付税交付金等
国債費は、過去に発行した国債(国の借金)の返済や利払いに充てられる費用です。地方交付税交付金等は、地域間の財政格差を埋めるために国が地方自治体へ配分するお金です。この2つと社会保障関係費を合わせると、歳出全体の3/4近くを占めることになります。
税金だけでは歳出をまかなえていない国の歳入(収入)のうち、税金でまかなわれているのは67.6%にとどまり、残りは公債金(国の借金)などでまかなわれています。つまり税金だけでは今の歳出を賄いきれておらず、将来世代への負担の先送りが続いているのが実情です。
税金の使い道に「無駄」はあるのか?会計検査院が指摘した金額の推移
税金の使い道の全体像がわかったところで、次は本題の「無駄」について見ていきましょう。
会計検査院とは(税金をチェックする機関)
税金の使い方をチェックしている機関が「会計検査院」です。国会にも裁判所にも内閣にも属さない独立した憲法上の機関で、日本国憲法第90条に基づき、国の収入と支出の決算を毎年検査しています。検査の結果は「決算検査報告」としてまとめられ、内閣を経由して国会に提出される仕組みです。
「無駄遣い」は正式な会計検査院用語ではない会計検査院が公表する「指摘金額」は、租税の徴収不足額や補助金の過大交付額、工事費の過大支払いなど様々な事態の総称です。実は会計検査院自身は、これを公式に「無駄遣い」と呼んでいません。ニュースなどで「税金の無駄遣い◯◯億円」と報じられる数字は、この指摘金額を指すのが一般的です。
直近の指摘額の推移
会計検査院の指摘金額は、年度によって変動しながらも、ここ数年は高い水準が続いています。
| 年度 | 指摘件数 | 指摘金額 |
|---|---|---|
| 令和元年度(2019年度) | 248件 | 297億2,193万円 |
| 令和4年度(2022年度) | 344件 | 580億2,214万円 |
| 令和5年度(2023年度) | 345件 | 648億6,218万円 |
| 令和6年度(2024年度・最新) | 319件(うち271件が不当事項) | 540億8,151万円 |
出典:会計検査院「令和元年度決算検査報告」、「令和4年度決算検査報告」、参議院決算委員会調査室「令和5年度決算検査報告の概要」、「令和6年度決算検査報告(最新)」(2026年7月21日確認)
令和5年度は3年連続の増加となり、直近の令和6年度は540億円台に落ち着いたものの、依然として高水準が続いています。令和6年度分の決算検査報告は2025年11月5日に内閣に提出されたもので、本記事執筆時点(2026年7月)で公表されている最も新しいデータです。次の令和7年度分は、例年の傾向であれば2026年秋以降に公表される見込みです。
具体的にどんな無駄遣いがあったのか|会計検査院・報道の事例
数字だけだとイメージしづらいので、実際にどんな事例が指摘されているのか、具体的に見ていきましょう。
不正受給・不正申請の事例(職業訓練分野)
令和6年度の決算検査報告では、求職者支援制度における「認定職業訓練実施奨励金」の不正受給が明らかになりました。ある職業訓練の実施団体が、2019年度から2024年度にかけて、実務経験5年以上という受講資格を満たしていない講師45人分の経歴を偽って申請を繰り返し、支給された奨励金6億3,554万円のうち5億2,204万円が不当と認定されました。
コロナ関連予算のずさんな執行
コロナ禍の緊急対応として組まれた予算では、より大規模な問題も指摘されています。令和4年度の決算検査報告では、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫が実施した実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」(総額19兆円)のうち、約6%にあたる1兆円超が回収困難な不良債権になっていたことも判明しました。
また、全国の自治体に配られた「地方創生臨時交付金」(総額18兆3,260億円)は使い道の自由度が高い制度で、調査報道メディアTansaの検証では、石川県能登町の巨大イカのモニュメント制作(3,000万円)など、コロナ対策との関連が薄い事業への支出が数多く見つかっています。物価高対策としての交付金活用も続いているため、こうした使い道は今後も注視が必要なテーマといえそうです。
大型プロジェクトへの国費投入を巡る指摘
ここで紹介する大阪・関西万博の事例は、会計検査院が「不当事項」として指摘した無駄遣いではありません。国費投入の規模や妥当性について報道・世論で意見が分かれているテーマとして、事実(金額)のみを紹介します。
大阪・関西万博の会場整備費は最大2,350億円で、国・大阪府市・民間がそれぞれ1/3ずつ負担する仕組みです。国費負担分は最大783億円で、これに日本政府館の建設費(最大360億円)、途上国の出展支援(約240億円)、会場内の安全確保費用(約255億円)、全国的な機運醸成費用(約103億円)などを合わせると、国費だけでも2,000億円近い規模になります(2025年2月時点)。当初の会場整備費は1,250億円で計画されていましたが、資材費の高騰などにより2度にわたり増額されており、この増額プロセス自体が「税金の使い道として妥当か」という議論を呼んでいます。
なぜ税金の無駄遣いはなくならないのか
これだけの事例が繰り返し指摘されているのに、なぜ無駄遣いがなくならないのでしょうか。構造的な要因を見てみましょう。
予算の「使い切り」構造
国の予算は憲法・財政法により、会計年度ごとに作成・議決する「単年度主義」が原則です。予算を使い残すと「その分は不要だった」とみなされ、翌年度の予算が削られてしまう可能性があるため、年度末(1〜3月)に予算を使い切ろうとする力学が生まれやすいと指摘されています。
チェック機能の限界(会計検査院は事後チェックのみ)
会計検査院は「常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る」機関ですが(会計検査院法第20条)、その性質上、検査は予算が執行された後の決算に対して行われます。つまり、無駄な支出を事前に止める権限は持っていません。国会での決算審査(衆議院の決算行政監視委員会、参議院の決算委員会)を通じて指摘事項が次の予算編成に反映されることが期待されていますが、この仕組みが十分に機能しているとは言い切れないのが実情です。
税金の使い道を自分でチェックする方法|私たちにできること
最後に、税金の使い道について私たち一人ひとりができることを整理しておきましょう。
決算検査報告・予算資料の見方
会計検査院の決算検査報告は、会計検査院の公式サイトで誰でも無料で閲覧できます。「どの省庁の、どんな事業に、いくらの無駄が指摘されたか」を確認できるので、気になるニュースを見たときに一次情報にあたる習慣をつけておくと安心です。実際に確認する手順はとてもシンプルです。
- 会計検査院公式サイトの「検査結果」ページを開く
- 最新の「決算検査報告」または「検査報告データベース」を選ぶ
- 省庁名やキーワードで気になる事業を検索し、指摘内容を確認する
ふるさと納税など使い道を選べる制度
税金の使い道に疑問を感じても、通常の納税では使い道を自分で選ぶことはできません。一方でふるさと納税は、寄付先の自治体だけでなく、教育・福祉・環境保全など使い道の分野を指定できる制度です。税金の使い道への関心を、実際の行動につなげる選択肢のひとつといえるでしょう。
まとめ
- 税金の使い道は社会保障が最大で、令和7年度予算では歳出全体の33.2%を占める
- 会計検査院の指摘金額は令和6年度(2024年度)で約540億円。ここ数年は高水準が続いている
- 「無駄遣い」という呼び方は報道上の通称で、会計検査院自身は公式に使っていない
- 大型プロジェクトの国費投入は、無駄遣いの指摘とは別に、使い道の妥当性そのものが議論の対象になっている
- 決算検査報告は誰でも無料で確認でき、国会の決算審査を通じて予算編成に反映される仕組みがある
よくある質問
国の税金(国税)は、社会保障(年金・医療・介護・子育て支援)に最も多く使われています。令和7年度予算では歳出全体の33.2%を占め、次いで国債費(24.5%)、地方交付税交付金等(16.4%)が続きます。
社会保障関係費です。その中でも、少子高齢化の影響で年金と医療にかかる費用の割合が大きくなっています。
会計検査院です。国会にも内閣にも属さない独立した憲法上の機関で、毎年、国の決算を検査し「決算検査報告」を公表しています。
会計検査院が公表した令和6年度(2024年度)決算検査報告では、指摘金額は約540億8,151万円でした(2025年11月公表、本記事執筆時点で最新のデータです)。
決算検査報告を実際に確認したり、国会の決算審査の議論に関心を持ったりすることが第一歩です。また、ふるさと納税のように使い道を自分で選べる制度を活用することも、税金の使われ方に関心を持つきっかけになります。
