キャッシュフロー計算書を作ろうとして、「間接法ってどう計算すればいいの?」「直接法との違いがわからない」とつまずいていませんか。この記事では、実務で主流の間接法を中心に、貸借対照表・損益計算書から数字をどう転記・加減算していくのか、具体的な4ステップで解説します。エクセルテンプレートや会計ソフトを使った作り方、迷いやすい調整項目の早見表もまとめました。

結論
キャッシュフロー計算書は「間接法」なら4ステップで作れます
実務で使われるキャッシュフロー計算書の多くは、損益計算書の税引前当期純利益からスタートして、非資金項目や資産・負債の増減を加減算していく「間接法」で作成されています。貸借対照表と損益計算書さえ手元にあれば、新たに帳簿を用意しなくても作成できるのが特徴です。まずは自社に作成義務があるかを確認したうえで、後述の4ステップに沿って数字を当てはめていきましょう。

キャッシュフロー計算書とは|財務三表における位置づけ

キャッシュフロー計算書(C/F)は、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)と並ぶ「財務三表」のひとつで、一定期間における現金・預金(キャッシュ)の増減を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに区分して示す財務諸表です。損益計算書の「利益」は帳簿上の数字であり、必ずしも手元の現金の増減と一致しません。キャッシュフロー計算書を見れば、利益が出ているのに手元の現金が減っている、といった「黒字倒産」の兆候にも早く気づけます。

貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)との違い

財務諸表何がわかるか対象期間
貸借対照表(BS)ある時点の資産・負債・純資産の状態決算日時点
損益計算書(PL)一定期間の収益・費用と利益会計期間
キャッシュフロー計算書(CF)一定期間の現金の増減とその理由会計期間

キャッシュフロー計算書が必要な理由

キャッシュフロー計算書の作成が義務付けられているのは、金融商品取引法の対象となる上場企業のみで、非上場の中小企業や個人事業主には作成義務はありません。ただし義務がなくても、資金繰りの実態を把握したり、金融機関からの融資審査で提出を求められたりする場面があるため、任意で作成する中小企業も少なくありません。

なお、家計簿や将来のライフプランのために「お金の流れ」を可視化したい方は、企業会計のキャッシュフロー計算書ではなく、家庭向けのキャッシュフロー表とは?無料テンプレと作り方で紹介している簡易表の方が使いやすいので、あわせてチェックしてみてください。

キャッシュフロー計算書の3つの区分

キャッシュフロー計算書は、現金の増減を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに区分して表示します。それぞれの区分がプラスかマイナスかを見るだけでも、会社の経営状態をおおまかに読み取ることができます。

営業活動によるキャッシュフロー

商品の販売や仕入れ、人件費の支払いなど、本業の営業活動によって生じた現金の増減です。ここがマイナスの状態が続いている場合は、本業でお金を稼げていないサインなので注意が必要です。

投資活動によるキャッシュフロー

設備投資や有価証券の購入・売却など、将来の利益のための投資に関する現金の増減です。成長企業では設備投資のためにマイナスになるのが一般的で、必ずしも悪い兆候ではありません。

財務活動によるキャッシュフロー

借入や返済、増資、配当金の支払いなど、資金調達・返済に関する現金の増減です。借入を行えばプラス、返済や配当を行えばマイナスになります。

直接法と間接法の違い|どちらで作るべきか

キャッシュフロー計算書の作り方には「直接法」と「間接法」の2種類があり、どちらを選んでも最終的な営業キャッシュフローの金額は一致します。違うのは、その金額をどう導き出すかという計算プロセスです。

直接法と間接法の比較表

直接法間接法
計算方法営業収入・仕入支出などを総額で集計税引前当期純利益から非資金項目等を加減算
必要な資料総勘定元帳など取引の明細貸借対照表・損益計算書
作成の手間多い(取引を個別に集計)少ない(既存の決算書から作成可能)
メリット資金の流れが総額でわかりやすい短時間で作成でき、利益との差異も把握しやすい
採用状況国際会計基準(IFRS)で推奨実務で採用する企業が多数派

実務で間接法が選ばれる理由

直接法は取引の総額を個別に集計する必要があり手間がかかる一方、間接法はすでに作成済みの貸借対照表・損益計算書をもとに計算できるため、実務での負担が少なく済みます。このため、実務では間接法を採用する企業が主流となっています。この記事でも、次のセクションから間接法の作り方を中心に解説します。

間接法でキャッシュフロー計算書を作る手順(4ステップ)

間接法では、損益計算書の「税引前当期純利益」を起点に、以下の4ステップで営業キャッシュフローを計算していきます。

1
税引前当期純利益から出発する

損益計算書に記載されている税引前当期純利益をそのまま起点の数字として使います。

2
非資金損益項目を加減算する

減価償却費や貸倒引当金の増加額など、現金の動きを伴わずに損益に計上されている項目を調整します。

3
営業外損益・特別損益を調整する

営業活動以外で生じた損益(受取利息、固定資産売却損益など)は、営業活動によるキャッシュフローから除外します。

4
営業活動に関する資産・負債の増減(運転資本)を調整する

売掛金・棚卸資産・買掛金など、営業活動に関わる資産・負債の増減額を加減算し、営業キャッシュフローを確定させます。

調整項目の加算・減算 早見表

間接法でつまずきやすいのが、どの項目を足して、どの項目を引くのかという判断です。以下の早見表で、代表的な調整項目の処理方法を確認しておきましょう。

調整項目処理理由
減価償却費加算現金支出を伴わない費用のため、利益に足し戻す
貸倒引当金・退職給付引当金の増加加算非資金の費用計上のため
売掛金の増加減算利益は計上済みでも現金は未回収
売掛金の減少加算過去の売上分の現金回収が進んだ
棚卸資産(在庫)の増加減算現金支出はあるが費用計上されていない
棚卸資産(在庫)の減少加算費用計上されても現金は減っていない
買掛金の増加加算費用は計上済みでも現金は未払い
買掛金の減少減算過去の仕入分の支払いが進んだ

間接法の加算・減算の符号は「現金が実際に増減したかどうか」を直接意味するものではなく、利益から営業キャッシュフローを逆算するための調整である、と理解しておくと迷いにくくなります。

売掛金や買掛金の増減は、日々の取引の記帳(仕訳)が正確であって初めて正しく把握できます。仕入れの勘定科目|仕訳例と経費との違いもあわせて確認しておくと、調整項目の集計でつまずきにくくなります。

間接法の記入例(計算イメージ)

実際にどのように数字を積み上げていくのか、仮の金額を使った計算イメージで確認してみましょう(単位:千円)。

項目金額
税引前当期純利益5,000
(加算)減価償却費+800
(加算)貸倒引当金の増加額+50
(減算)売掛金の増加額▲600
(加算)棚卸資産の減少額+300
(加算)買掛金の増加額+400
営業活動によるキャッシュフロー5,950

このように、税引前当期純利益からスタートし、早見表に沿って項目を1つずつ加算・減算していくと、営業活動によるキャッシュフローの金額が確定します。実際の金額は自社の貸借対照表・損益計算書の数字に置き換えて計算してください。

直接法でキャッシュフロー計算書を作る手順

直接法では、営業収入・仕入支出・人件費支出など、営業活動に関する現金の出入りをそれぞれ総額で集計します。総勘定元帳や現金出納帳から、以下のような項目を科目別に集計していきます。

  • 営業収入(商品・サービスの販売による現金収入)
  • 原材料・商品の仕入による支出
  • 人件費の支出
  • その他営業費用の支出

間接法に比べて集計対象が細かく、取引量が多い企業ほど作成の手間がかかります。そのため、初めてキャッシュフロー計算書を作る場合は、まず間接法で作成し、資金の流れをより詳細に分析したい場面で直接法を検討するのがおすすめです。

エクセル・無料テンプレートで作る方法

間接法によるキャッシュフロー計算書は、貸借対照表・損益計算書の数字をもとにエクセルで作成することもできます。前期・当期2期分の貸借対照表と当期の損益計算書を用意し、この記事で紹介した4ステップの計算式をシートに組んでいけば、自作のテンプレートとして毎期使い回せます。

会計ソフトを使う方法(freee・マネーフォワード等)

日々の取引を会計ソフトに入力していれば、決算時にキャッシュフロー計算書を自動作成できる機能を備えたサービスもあります。手作業での集計に不安がある場合は、こうした会計ソフトの活用も選択肢のひとつです。

freeeの勘定科目の扱いについては会費はどの勘定科目?仕訳例とfreeeの使い方、マネーフォワードの選び方についてはマネーフォワードとZaim比較!どっちを選ぶ?でも詳しく解説しているので、ソフト選びの参考にしてみてください。

キャッシュフロー計算書の学習・実務に役立つアイテム

キャッシュフロー計算書を自分の手で作れるようになりたい方に向けて、学習と実務の両方で役立つアイテムをまとめました。価格の推移も確認しながら、必要なタイミングで揃えてみてください。

作成後の見方・活用のポイント

フリーキャッシュフローの考え方

営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた金額は「フリーキャッシュフロー」と呼ばれ、会社が自由に使える資金の目安になります。フリーキャッシュフローがプラスであれば、借入に頼らずに事業投資や借入金の返済を進められる状態にあると判断できます。

営業CFがマイナスのときの注意点

営業キャッシュフローがマイナスの場合、本業で現金を稼げていない状態が続いている可能性があります。単月・単期の一時的なマイナスであれば大きな問題にならないこともありますが、複数期にわたってマイナスが続く場合は、売掛金の回収サイトの見直しや在庫の圧縮など、資金繰り改善の対策を早めに検討しましょう。

よくある質問

キャッシュフロー計算書はエクセルで作れますか?

作成できます。前期・当期の貸借対照表と当期の損益計算書があれば、この記事で紹介した間接法の4ステップの計算式をエクセルのシートに組むことで、自作のテンプレートとして作成・再利用が可能です。

間接法と直接法、どちらを選べばいいですか?

初めて作成する場合や、既存の決算書から効率的に作りたい場合は間接法がおすすめです。取引ごとの資金の流れをより詳細に把握したい場合は直接法も検討してみてください。

中小企業でもキャッシュフロー計算書は作ったほうがいいですか?

作成義務があるのは上場企業のみで、非上場の中小企業には義務はありません。ただし、資金繰りの実態把握や金融機関への提出資料として役立つ場面が多いため、任意で作成する中小企業も少なくありません。

営業キャッシュフローがマイナスの場合はどうすればいいですか?

一時的なマイナスであれば大きな問題にならないこともありますが、複数期続く場合は売掛金の回収サイト短縮や在庫圧縮など、資金繰り改善の対策を検討することをおすすめします。

キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違いは何ですか?

キャッシュフロー計算書は決算時に過去1期間の現金の増減を3区分でまとめる財務諸表であるのに対し、資金繰り表は将来の資金繰りを日次・月次などの単位で予測・管理するための資料という違いがあります。

まとめ

  • キャッシュフロー計算書は財務三表の一つで、現金の増減を営業・投資・財務の3区分で示す
  • 実務では、既存の決算書から作成できる「間接法」が主流
  • 間接法は「税引前当期純利益→非資金項目調整→営業外損益調整→運転資本調整」の4ステップで作成できる
  • 売掛金・買掛金・棚卸資産などの調整項目は、加算・減算の方向を早見表で確認しながら進めると迷いにくい
  • エクセルでの自作のほか、会計ソフトの自動作成機能を使う方法もある

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