商品や原材料を購入したとき、「仕入」と「消耗品費」のどちらの勘定科目を使えばいいのか迷ったことはありませんか。仕入れは売上原価に関わる重要な処理ですが、経費との線引きがあいまいになりやすく、経理担当者や個人事業主の方でも判断に迷いやすいポイントです。この記事では、仕入れの勘定科目の基本から、経費との違い、三分法・分記法の仕訳例、支払い方法別の処理、個人事業主が気をつけたいポイントまで、まとめて解説します。

結論
仕入れの勘定科目はどれを使えばいい?
採用している仕訳方式や、購入したものの使い道によって使うべき勘定科目が変わります。まずは自分のケースに近いものをチェックしてみてください。
三分法を使っている(一般的) 販売・製造目的で購入した商品や原材料 → 仕入(仕入高)で処理
分記法を使っている 取引ごとに利益を把握したい → 商品で処理
販売用か自社用か迷っている 販売目的なら仕入、自社で使うなら 消耗品費
個人事業主で在庫や自家消費が気になる 期末在庫は資産扱い、自家消費は70%ルールに注意

仕入れの勘定科目は「仕入」または「商品」【結論】

仕入れとは、販売や製造の目的で商品や原材料を購入することです。仕入れにあたって使う勘定科目は、採用している記帳方式によって「仕入(仕入高)」か「商品」のどちらかになります。もっとも一般的な「三分法」という方式では「仕入」という科目を使い、「分記法」という方式では「商品」という科目を使います。

「仕入」は損益計算書上、売上原価という費用のグループに分類されます。事務用品費や消耗品費のような一般的な経費とは扱いが異なり、売上と対応させて利益を計算するための科目という点が特徴です。

ポイント:迷ったら、まず「仕入(三分法)」で処理しておけば大きく間違うことはありません。三分法は最も一般的な方式で、多くの会計ソフトでも標準の記帳方式として採用されています。

仕入れと経費(消耗品費)の違いは?【判定早見表】

仕入れの勘定科目でもっとも判断に迷いやすいのが、「消耗品費」や「外注費」との違いです。似たような支出でも、目的によって使うべき科目がまったく変わります。早見表で整理してみましょう。

費目判断のポイント具体例
仕入(売上原価)販売・製造目的で購入した商品や原材料販売用の商品、製造用の原材料
消耗品費自社の業務で使うために購入したもの事務用品、社内で使う梱包資材
外注費業務の一部を外部に委託した対価デザイン外注費、製造委託費
荷造運賃商品を販売する際に発生する梱包・発送費用販売用商品の梱包材、配送料

「仕入」か「消耗品費」か迷ったときの判定ポイント

もっとも基本的な判断基準は、「その商品や材料が最終的に売上に結びつくかどうか」です。以下のチェックリストで、自分のケースがどちらに当てはまるか確認してみてください。

仕入(売上原価)で処理
  • 商品としてそのまま販売する予定で購入した
  • 製品を作るための原材料として購入した
  • 購入した物が加工されて売上に直接結びつく
消耗品費(経費)で処理
  • 自社の業務で使うために購入した(販売しない)
  • コピー用紙や文房具など、社内で消費するもの
  • 使用可能期間が1年未満、または取得価額が少額なもの

編集部のひとこと:梱包資材のように、販売用と社内用の両方に使うものは判断が割れやすいポイントです。販売する商品の梱包に使う分は「荷造運賃」または「仕入諸掛(仕入の付随費用)」、社内の発送物に使う分は「消耗品費」というように、用途で分けて処理すると整理しやすくなります。

ちなみに、勘定科目の判断に迷うのは仕入れだけではありません。たとえば会費も、支払う目的によって使う科目が変わる費用のひとつです。

仕入れの仕訳方法|三分法・分記法の選び方と仕訳例

仕入れの仕訳方法には主に「三分法」と「分記法」の2種類があります。それぞれの仕訳例を見ながら、違いを確認していきましょう。

三分法(仕入・売上・繰越商品)の仕訳例

三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定科目を使う方法です。商品を50,000円で仕入れ、80,000円で販売したケースで見てみましょう。

タイミング借方金額貸方金額
仕入時仕入50,000円現金50,000円
販売時現金80,000円売上80,000円

期末に商品が10,000円分売れ残っていた場合は、決算整理仕訳で「繰越商品」に振り替え、当期の仕入(売上原価)を実態に合わせて調整します。

タイミング借方金額貸方金額
決算整理時繰越商品10,000円仕入10,000円

分記法(商品・商品売買益)の仕訳例

分記法は「商品」「商品売買益」の2つの勘定科目を使い、販売のたびに利益を計算する方法です。同じく50,000円で仕入れ、80,000円で販売したケースだと、以下のようになります。

タイミング借方金額貸方金額
仕入時商品50,000円現金50,000円
販売時現金80,000円商品/商品売買益50,000円/30,000円

分記法では、販売した瞬間に原価と利益が分かる代わりに、販売のたびに「いくらで仕入れた商品を売ったか」を把握しておく必要があります。

三分法と分記法、どちらを選ぶべきか

三分法分記法
使う勘定科目仕入・売上・繰越商品商品・商品売買益
向いている事業者取引件数が多い一般的な事業者取引件数が少ない小規模な事業者
利益の把握タイミング決算時にまとめて把握取引のたびに把握できる

取引件数が多い場合や、どちらを選べばいいか判断がつかない場合は、まず三分法を選んでおくのが無難です。一度選んだ方式は、継続して使い続けることが会計処理の原則になります。

三分法・分記法以外の方法もある:仕訳方法には他に、値引きや返品が多い事業者向けの「五分法」(三分法に「仕入値引・戻し」「売上値引・戻し」を加えた方法)や、「商品」1科目のみで記帳する「総記法」もあります。ただしどちらも実務での採用例は限られるため、特別な事情がなければ三分法・分記法のどちらかを選べば十分です。

【支払い方法別】仕入れの仕訳例(現金・掛け・クレジットカード)

実務では、支払い方法によって使う貸方の勘定科目が変わります。ここでは三分法をベースに、代表的な3つのパターンを紹介します(金額は一例として30,000円で統一しています)。

現金払いの仕訳

その場で現金を支払う、もっともシンプルなケースです。

借方金額貸方金額
仕入30,000円現金30,000円

掛け(買掛金)の仕訳

後日まとめて支払う「掛け取引」の場合は、貸方に「買掛金」を計上します。実際に支払ったタイミングで買掛金を消し込みます。

タイミング借方金額貸方金額
仕入時仕入30,000円買掛金30,000円
支払時買掛金30,000円普通預金30,000円

クレジットカード払いの仕訳

クレジットカードで支払う場合も、利用したタイミングと口座から引き落とされるタイミングの2段階に分けて仕訳します。

タイミング借方金額貸方金額
利用時仕入30,000円未払金30,000円
引き落とし時未払金30,000円普通預金30,000円

ポイント:買掛金と未払金はどちらも「後払いの負債」を表しますが、買掛金は商品仕入れなど営業取引に伴うもの、未払金はそれ以外の取引(クレジットカード払いなど)に伴うものという使い分けが一般的です。

個人事業主・フリーランスが仕入れを処理する際の注意点

個人事業主やフリーランスの方が仕入れを処理する際は、法人以上に気をつけたいポイントがいくつかあります。

期末の在庫(棚卸資産)は経費にならない

その期に仕入れた金額をすべて経費にできるわけではありません。期末に売れ残っている在庫(棚卸資産)は、その期の経費(売上原価)には含まれず、資産として翌期に繰り越します。売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」という計算式で求めるため、期末に在庫を多く抱えているほど、その期の経費として計上できる仕入額は少なくなります。

国税庁も棚卸資産の評価方法を通達で定めており、決算のたびに在庫を正しく数えて評価額を計算する必要があります。在庫の棚卸を忘れると、経費を過大に計上してしまうことになるので注意しましょう。

仕入れた商品を自分で使った場合(家事消費)の扱い

個人事業主が、販売用に仕入れた商品を自分や家族のために使ってしまうことを「家事消費(自家消費)」と呼びます。この場合、無償で消費したとしても収入がゼロになるわけではありません。所得税法上は、仕入価額と、通常の販売価額のおおむね70%相当額のいずれか高い金額を収入として計上することになっています。

注意:消費税の計算上は、家事消費の扱いが少し異なります。消費税法では、仕入価額以上かつ通常の販売価額のおおむね50%相当額以上の対価を計上すれば認められるとされています。所得税は70%、消費税は50%と基準が違う点を覚えておきましょう。

確定申告書での記入欄

仕入金額は、確定申告の際にも記入が必要です。白色申告の場合は収支内訳書、青色申告の場合は青色申告決算書に、それぞれ仕入金額や売上原価を記入する欄が設けられています。日々の記帳を三分法できちんと行っておけば、申告書への転記もスムーズになります。

仕入れの計上基準(いつ仕訳するか)

仕入れをいつのタイミングで仕訳に計上するかにも、いくつかの考え方があります。代表的なものは以下のとおりです。

  • 出荷基準:仕入先が商品を出荷した日に計上する
  • 入荷(納品)基準:自社に商品が届いた日に計上する
  • 検収基準:商品を検品し、内容を確認した日に計上する
  • 回収基準:委託販売などで、代金を回収した日に計上する

どの基準を採用するかは事業者が選択できますが、一度決めた基準は継続して使い続けるのが原則です。取引先ごとに基準がバラバラだと在庫管理や決算処理が煩雑になるため、社内でルールを統一しておくと安心です。

インボイス制度・仕入税額控除との関係【2026年7月時点】

仕入れの処理では、消費税の「仕入税額控除」も関わってきます。インボイス制度のもとでは、原則として適格請求書発行事業者からの仕入れでないと、仕入税額控除を受けられません。ただし免税事業者など、適格請求書を発行できない相手からの仕入れについては、一定期間・一定割合を控除できる経過措置が設けられています。

期間控除割合
2023年10月〜2026年9月80%
2026年10月〜2028年9月70%
2028年10月〜2030年9月50%
2030年10月〜2031年9月30%
2031年10月以降適用なし(0%)

国税庁によると、令和8年度税制改正により2026年10月以降の控除割合が見直され、当初予定されていた50%から70%に引き上げられたうえで、2028年10月以降に50%、2030年10月以降に30%と段階的に縮小されるスケジュールに変更されています。

注意:本記事は2026年7月時点の情報です。インボイス制度の経過措置は税制改正によって変更されることがあるため、最新の情報は国税庁のサイトでご確認ください。

よくある質問

仕入と消耗品費の違いは何ですか?

仕入は販売目的で購入した商品や原材料の費用で、売上原価に分類されます。消耗品費は自社で使用するために購入したものの費用で、事務用品や社内で使う資材などが該当します。「販売するために買ったか、自社で使うために買ったか」で判断するのが基本です。

個人事業主でも仕入の勘定科目は必要ですか?

商品や原材料を販売目的で購入する事業を行っている場合は、個人事業主でも仕入の勘定科目を使います。三分法を使うのが一般的で、白色申告なら収支内訳書、青色申告なら青色申告決算書に仕入金額を記入します。

三分法と分記法はどちらを選べばいいですか?

取引件数が多い一般的な事業者には三分法がおすすめです。分記法は取引ごとに利益を把握できる一方、仕訳の都度、商品の原価を計算する手間がかかるため、取引件数が少ない小規模な事業者に向いています。

一度決めた勘定科目や仕訳方法は変更できますか?

会計処理では、同じ性質の取引には継続して同じ勘定科目・仕訳方法を使うのが原則です(継続性の原則)。年によって三分法にしたり分記法にしたりすると、帳簿の一貫性が崩れてしまうため、一度決めた方法は基本的に使い続けましょう。

仕入れにかかった送料や手数料はどう処理すればいいですか?

商品を仕入れる際にかかった引取運賃や関税、買入手数料などの付随費用(仕入諸掛)は、仕入の原価に含めて処理するのが原則です。仕入本体の金額と合わせて「仕入」の勘定科目で計上します。

まとめ

  • 仕入れの勘定科目は、三分法なら「仕入」、分記法なら「商品」を使う
  • 販売・製造目的なら仕入、自社使用目的なら消耗品費で処理する
  • 仕訳は現金・掛け・クレジットカードなど支払い方法によって使う科目が変わる
  • 個人事業主は、期末在庫が経費にならない点、家事消費は70%ルールがある点に注意する
  • インボイス制度の経過措置は2026年10月から控除割合が70%に変わる(2026年7月時点の情報)

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