投資信託は少額から始められて、プロが運用してくれる便利な金融商品です。ただ、元本保証の預金とは性質がまったく異なります。「何となく始めたら思ったより損をした」「手数料でこんなに取られると思わなかった」という声はよく聞かれます。この記事では、投資信託を始める前・運用中に押さえておきたい注意点を、よくある誤解も含めて具体的に解説します。

結論
投資信託で注意したいポイント
  1. 1元本保証がない — 損失が出る可能性を理解したうえで始める
  2. 2コストを必ず確認する — 販売手数料・信託報酬・信託財産留保額の3種類
  3. 3基準価額の「高い・安い」は割安感と無関係
  4. 4分配金型ファンドは「元本払い戻し(特別分配金)」のケースがある
  5. 5流行テーマ型・ランキング上位への飛びつきは避ける
  6. 6分散投資と長期積立(ドル・コスト平均法)を基本とする
  7. 7目論見書(交付目論見書)を必ず読んでから購入する
  8. 8市場の値動きに一喜一憂せず、積立を継続する

元本保証がない — 投資信託はあくまで「投資」

銀行の預金は元本が保証されていますが、投資信託はまったく別物です。投資信託は株式・債券などの値動きがある金融商品に投資するため、購入したお金が減るリスクがあります。まずこの点を正しく理解することが、投資信託を始めるうえでの大前提です。

発生しうるリスクの種類

投資信託には以下のようなリスクが存在します。どのリスクがどのくらい含まれているかは、ファンドによって異なります。

リスクの種類内容主に影響するファンド
価格変動リスク組み入れた株式・債券の価格が下がると基準価額が下がる株式型・バランス型
為替変動リスク外貨建て資産を保有する場合、円高になると評価額が下がる海外株式型・海外債券型
信用リスク投資先の企業・政府が債務不履行になると損失が出る社債型・新興国債券型
流動性リスク市場環境によっては希望する価格で売却できない場合がある小型株型・特殊ファンド

過去の下落局面はどのくらい?

過去の大きな相場下落を振り返ると、リスクの大きさが具体的にイメージできます。

過去の主な下落事例(世界株式ベース)

2008年リーマンショック: 約6ヶ月で約44%下落。元の水準に戻るまで約22ヶ月を要した

2020年コロナショック: 約2ヶ月で約33%下落。ただし約6ヶ月程度で回復した

一方で、金融庁のデータによると、20年間にわたって積立投資を継続した場合、元本割れは発生せず、年率2〜8%の収益が得られたことが示されています。「いつ始めるか」より「いつまで続けるか」が重要なことがわかりますね。

ポイント: 投資信託は短期的には大きく下落することがありますが、長期保有することでリスクが平準化されやすい特性があります。生活費に影響しない「余裕資金」で始めることが大切です。急に現金が必要になると、下落中に損失を確定して売却せざるを得なくなるためです。まずは生活費6ヶ月分程度を手元に残してから、残りの余裕資金を投資に回すようにしましょう。

コストを必ず確認する — 販売手数料・信託報酬・信託財産留保額

投資信託には複数の手数料がかかります。これを確認せずに購入すると、「運用益は出ているのに実質的にほとんど増えていない」という事態が起こり得ます。手数料には大きく3種類あります。

購入時
販売手数料
0〜3.3%
購入金額に対して1回だけかかる費用。ノーロード型は0%
保有中(毎年)
信託報酬
年0.05〜2%
保有残高から毎日少しずつ差し引かれる費用

販売手数料(購入時)— ノーロード型との比較

販売手数料は購入時に1回だけかかる費用で、一般的には0〜3.3%の範囲で設定されています。最近ではネット証券を中心に手数料が0%の「ノーロード型」が増えており、同じファンドでも購入先によってコストが変わることがあります。同じファンドを選ぶなら、ノーロード型で購入できる証券会社を選ぶのが合理的です。

信託報酬(保有中)— インデックスvsアクティブの目安

信託報酬は保有期間中にかかり続けるコストで、長期投資では最も重要な費用です。

運用タイプ信託報酬の目安特徴
インデックスファンド年率0.05〜0.3%程度指数に連動。コスト低め
アクティブファンド年率1.0〜2.0%程度銘柄を選別して運用。コスト高め

参考として、国内で人気のインデックスファンドの信託報酬を見てみましょう。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は年率0.0814%(2025年6月時点)、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は年率0.05775%と、非常に低コストで提供されています。

年率1.5%と年率0.1%の違いは小さく見えるかもしれませんが、100万円を20年間運用した場合、この差だけで手数料合計に大きな開きが生まれます。コストは「複利の逆効果」として長期で拡大するため、特にインデックスファンドを選ぶ場合は信託報酬の低さを重視しましょう。

信託財産留保額(解約時)— 見落としがちなコスト

ファンドによっては解約時に「信託財産留保額」というコストもかかります。約定日の基準価額に最大0.5%程度が乗じられる費用で、長期保有前提なら影響は小さいですが、購入前に確認しておくと安心です。目論見書の「手数料等及びリスク」の欄に記載されています。

合計コストで比べる習慣を: 販売手数料がかからないノーロード型でも、信託報酬が高ければ長期では割高になります。「購入時コスト + 年間信託報酬 × 保有年数」で比較するのが賢明です。

基準価額の「高い・安い」は割安感と関係ない

投資信託を選ぶとき、「基準価額が安いほうが割安でお得」と思っている方が意外と多くいらっしゃいます。これはよくある誤解で、実際はまったく異なります。

なぜ基準価額の高低は割安感と関係ないのか

りそなグループのコラムでも解説されているように、すべての投資信託は設定時に10,000円からスタートします。その後、運用成績によって基準価額が変動します。

例えば、日経平均連動型のファンドが2つあったとします。

・ファンドA(10年前設定): 現在の基準価額 25,000円

・ファンドB(3年前設定): 現在の基準価額 12,000円

→ どちらも同じ指数に連動しているなら、今後の値動きはほぼ同じ。ファンドBが「割安」なのではなく、単に設定が新しいだけです。

比較すべきは「基準価額の高低」ではなく、「同じ運用方針・同じ指数に連動するファンドの中でコストが低いか」です。この視点で選ぶと、より合理的な判断ができます。

分配金型ファンドの落とし穴

「毎月分配型」などの分配金が頻繁に出るファンドは、定期的に現金を受け取れるので魅力的に感じますよね。ただ、注意が必要な点があります。

普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の違い

投資信託の分配金には2種類あります。

種類実態課税
普通分配金運用益(利益)から支払われる課税対象(約20.315%)
特別分配金(元本払戻金)元本から払い戻される非課税(ただし元本が減る)

特別分配金は非課税なので一見お得に見えますが、実態は自分が投資したお金が返ってきているだけです。「分配金をもらったつもりが、気づいたら元本が減っていた」というケースがあるため、分配金の多さだけで判断しないようにしましょう。

再投資型のほうが長期では有利なことが多い

長期で資産を増やすことが目的の場合、分配金を受け取らず自動的に再投資する「再投資型(分配金再投資コース)」のほうが複利効果を享受できるため、長期では有利になるケースが多いです。分配金受取型は、老後の生活費として定期的な収入が欲しい方向きの選択と考えましょう。

注意: 毎月分配型ファンドの中には、運用益を超える分配を出しているものがあります。その場合、事実上「自分のお金を少しずつ返してもらっている」だけで、資産は増えていません。購入前に分配金の原資(普通分配金か特別分配金か)を確認しましょう。

流行テーマ型・ランキング上位への飛びつきに注意

「AIブーム」「半導体」「脱炭素」といった旬のテーマに投資する「テーマ型ファンド」や、証券会社のサイトで表示される「ランキング上位」ファンドに飛びついてしまう方は多いです。ただ、これには落とし穴があります。

テーマ型投資信託が成績を落としやすい理由

テーマ型ファンドが話題になる頃には、関連銘柄の株価がすでに高騰していることが多く、その後は期待の剥落とともに値下がりするケースが見られます。また、テーマが長続きしないこともあり、購入タイミングを間違えると大きな損失につながるリスクがあります。初心者が最初に選ぶファンドとしては、シンプルなインデックスファンドのほうが適しているでしょう。

ランキング上位 ≠ 自分に合った商品

投資信託のランキングは多くの場合、「純資産総額の多いもの」や「直近の騰落率が高いもの」が上位に来ます。しかし純資産総額が大きければいいわけではなく、直近の成績が高いファンドは逆にリスクが高い可能性もあります。ランキングを参考にするのはよいですが、あくまでも「自分の投資目的・リスク許容度・投資期間」に合っているかを自分で判断することが大切です。

分散投資と長期積立を基本とする

投資のリスクを抑える最も基本的な方法が「分散投資」と「長期保有」です。この2つを組み合わせることで、一時的な下落の影響を抑えながら資産を育てやすくなります。

ドル・コスト平均法の効果(時間分散)

毎月一定額を積み立てる方法を「ドル・コスト平均法」といいます。価格が高いときは少ない口数を、価格が安いときは多くの口数を自動的に購入するため、平均購入単価が抑えられる「時間分散効果」が期待できます。

基準価額積立金額購入口数
1月10,000円10,000円1口
2月8,000円(下落)10,000円1.25口
3月12,000円(上昇)10,000円0.83口
→ 合計購入単価の平均約9,756円

一括投資だと「高いときに全額買ってしまった」という事態が起こりますが、積立投資は機械的に続けるため感情に左右されにくく、相場の下落もむしろ多く口数を買えるチャンスになります。

資産クラス・地域の分散

投資先を1つの資産・地域に集中させると、その市場が不調なときに資産全体が大きく下がります。国内・海外の株式と債券、さらにリート(不動産投資信託)など、値動きの異なる資産クラスを組み合わせることでリスクを分散できます。最初の1本に迷ったら「バランス型ファンド」から始めるのも手です。

目論見書(交付目論見書)を必ず読む

投資信託には「目論見書(交付目論見書)」という説明書があり、購入前に交付が義務付けられています。「長いし難しそう」と感じるかもしれませんが、少なくとも以下の5点は必ず確認しましょう。

  • 運用方針・投資対象: 何に、どの地域に、どう投資するのかを把握する
  • 手数料の合計(トータルコスト): 販売手数料・信託報酬・信託財産留保額の3種類を確認する
  • ベンチマーク(連動指数): どの指数に連動するか、アクティブ型なら過去実績と比較する
  • リスクの説明: 価格変動リスク・為替リスクの有無と程度を確認する
  • 分配金の方針: 再投資型か受取型か、分配金が出る条件は何かを確認する
  • 純資産総額の規模: 残高が極端に少ないファンドは途中で繰上償還(運用終了)になるリスクがある。10億円以上を目安に確認する

目論見書はネット証券の場合、購入手続き前に電子交付形式で必ず提示されます。「次へ」を押す前にスクロールして確認する習慣をつけると、「思っていたのと違う」というトラブルを防げます。

市場の値動きに一喜一憂しない

投資信託でよくある失敗のひとつが「値下がりが怖くて売ってしまう」ことです。相場が下落して不安になり、損失を確定させてしまうと、その後の回復局面で恩恵を受けられません。

株式市場は短期的には大きく動きますが、長期的には成長する傾向があります(ただし保証はありません)。コロナショックでは世界株式が約33%下落しましたが、約6ヶ月で回復しています。感情的な売買は、高値で買って安値で売る結果を招きやすく、長期的な資産形成の大きな障壁になります。

おすすめの習慣: 基準価額を毎日確認するのをやめてみましょう。積立設定をしたら「月1回の残高確認」程度にとどめると、感情的な判断をしにくくなります。投資信託は長期目線で「放置できる」のが強みのひとつです。

また、相場が下落しているときこそ、同じ積立金額でより多くの口数を買えるチャンスです。長期投資ではむしろ下落期間が「安く仕込める時期」になります。目先の値動きより、目的(老後の資金づくり、教育費など)を見据えて継続することが大切です。

NISAを活用して非課税の恩恵を受ける

通常、投資で得た利益には約20.315%の税金がかかります。ただし、2024年から始まった新NISAを活用すると、一定枠内の利益が非課税になります。投資信託を始めるなら、まずNISA口座で運用するのが基本です。

新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠の使い分け

つみたて投資枠成長投資枠
年間上限120万円240万円
生涯上限合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)
対象商品金融庁が認定した低コストのインデックスファンド等幅広い株式・投資信託
非課税期間無期限

初心者の方は、金融庁が選定した商品の中から選べる「つみたて投資枠」から始めるのが安心です。長期積立を基本とする投資信託との相性が高く、売却益・分配金の両方が非課税になります。

まとめ:投資信託で失敗しないためのチェックリスト

投資信託は長期・積立・分散を意識すれば、初心者でも取り組みやすい資産形成の手段です。ただ、始める前と運用中に注意すべき点があることも事実。購入前に以下のチェックリストで確認してみてください。

📋 購入前チェックリスト

  • 元本保証がないことを理解したうえで、余裕資金で始める準備ができている
  • 販売手数料・信託報酬・信託財産留保額(3つのコスト)を確認した
  • 基準価額の高低が割安感と無関係であることを知っている
  • 分配金型を選ぶ場合、普通分配金と特別分配金の違いを理解している
  • 流行テーマ・ランキングだけで選ばず、自分の投資目的に合うか確認した
  • 長期積立(ドル・コスト平均法)を基本とした運用計画を立てた
  • 目論見書(特に手数料・リスク・分配方針)を確認した
  • NISA口座を開設して、非課税の恩恵を受ける準備をした

価格チェックや値下がり通知は、プライシーアプリでも手軽に確認できます。投資信託の周辺商品(証券口座での対応金融商品など)の価格動向も、ぜひプライシーを活用してみてください。

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よくある質問

投資信託は最低いくらから始められますか?

ネット証券では100円から始められる商品が多くあります。少額から試してみて感覚をつかんでから積立額を増やすのもよい方法です。

投資信託はいつでも売却できますか?

基本的にはいつでも解約(売却)の申し込みができますが、売却代金の受け渡しまでに約定日から2〜5営業日程度かかります。急にお金が必要になるケースに備えて、生活費は別に確保したうえで投資しましょう。

インデックスファンドとアクティブファンドはどちらがいいですか?

初心者には、コストが低く仕組みがシンプルな「インデックスファンド(指数連動型)」がおすすめです。アクティブファンドは信託報酬が高く、必ずしも市場平均を上回るとは限りません。長期投資ではコストの差が大きく影響するため、まずはインデックスファンドから始めるのが合理的です。

NISAと投資信託はどう組み合わせますか?

NISA口座(特につみたて投資枠)を使って投資信託を購入するのが基本です。通常の口座では利益に約20.315%の税金がかかりますが、NISA口座内では非課税になります。年間360万円まで(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯1,800万円まで利用できます。

投資信託で元本割れした場合、どうすればよいですか?

一時的な元本割れはよくあることです。長期投資を前提にしているなら、感情的に売却せず保有を続けることが一般的な選択肢です。ただし、自分のリスク許容度を超えた投資をしている場合や、資金が急に必要になった場合は、損失を確定させても解約を検討することも選択肢のひとつです。

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