適用は学部(学士課程)が2025年度入学生から、修士課程は2029年度入学生からの予定。博士課程は据え置き。値上げと同時に授業料全額免除の世帯年収基準を400万円から600万円以下に拡大する学生支援の拡充も実施された。
東大の授業料値上げ|いつから・いくらになったか
東京大学は2024年9月24日、20年ぶりとなる授業料の値上げを正式に決定した。2025年度(令和7年度)入学生から年間授業料が535,800円から642,960円に引き上げられる。
値上げ後の授業料と入学金(2025年度〜)
| 項目 | 2024年度以前 | 2025年度〜(値上げ後) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 授業料(年額)学部生 | 535,800円 | 642,960円 | +107,160円 |
| 入学料 | 282,000円 | 282,000円 | 変更なし |
| 授業料(年額)修士課程 | 535,800円 | 535,800円(現在は変更なし) | 変更なし |
| 授業料(年額)博士課程 | 520,800円 | 520,800円 | 据え置き |
出典:東京大学「入学料・授業料」(2026年5月時点)
注意:国立大学の授業料は文部科学省の標準額(現在は535,800円)の120%を上限に各大学が設定できる。東大の642,960円はこの上限いっぱいの金額。
学部・修士・博士の適用時期の違い
| 課程 | 値上げ適用 | 適用開始時期 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 学部(学士課程) | あり | 2025年度入学生から | 2024年度以前入学者は旧額のまま |
| 修士課程 | あり(予定) | 2029年度入学生から(予定) | 現在の在学・入学者は旧額 |
| 博士課程 | なし | 据え置き | 値上げ対象外 |
重要なのは、2024年度以前に学部入学した在学生には値上げは適用されない点だ。新授業料が適用されるのは2025年4月以降の新入学者から。
4年間・6年間の総額はいくらか
| 課程・在籍年数 | 旧額での総額 | 値上げ後の総額 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 学部4年(文系・理系等) | 2,425,200円 | 2,853,840円 | +428,640円 |
| 学部6年(医学部等) | 3,496,800円 | 4,139,760円 | +642,960円 |
※総額 = 入学料(282,000円)+ 授業料(年額×在籍年数)で算出。入学年度によって旧額・新額が混在する場合あり。
なぜ値上げになったのか|3つの背景
東大が20年ぶりの値上げに踏み切った背景には、大学の財政事情と将来への投資という2つの側面がある。
①国からの運営費交付金が削減され続けている
国立大学の財政を長年支えてきた運営費交付金は、2004年の国立大学法人化以降、削減傾向が続いている。2025年度の運営費交付金は法人化当初から約1,630億円減少し、1兆円前後まで落ち込んでいる(東大新聞オンライン、2026年5月)。
2026年度は前年比2%増の1兆971億円となり、国立大学協会も「極めて画期的」と評価したが、法人化前との差は依然として大きく、大学運営の基盤は脆弱なままだ。
②物価高騰・光熱費・人件費の増加
近年の物価高騰により、大学の運営コストも急増している。光熱費・業務委託費などの義務的経費に加え、人事院勧告に伴う人件費の増加も続いており、既存の財源では教育環境の維持が困難になっている。
③「世界トップ大学」実現のための財源確保
東大は藤井輝夫総長のUTokyo Compassで「世界の誰もが来たくなる大学」を目標に掲げている。この目標達成に向けた教育環境の整備には安定財源が必要であり、授業料値上げの増収分は以下に充てられる予定だ。
- 学修支援システム「UTokyo One(UTONE)」の機能強化
- TA(ティーチングアシスタント)の処遇改善と施設維持
- 図書館機能の強化と学術資産活用
- バリアフリー強化・メンタルヘルスケアの充実
- 留学のための奨学金の拡充
なお、値上げによる増収分は当初29億円と試算されていたが、その後13.5億円に修正されている。東大の年間経常収益が約3,000億円規模であることを踏まえると、値上げが大学財政全体に与える影響は限定的との見方もある。
注意:増収分の使途(UTONEなど)に対しては、学生から実効性を疑問視する声も上がっている。東大新聞の取材によると、UTONEを先行利用した学生からの評判は芳しくないという報告もある。
値上げと同時に拡充された学生支援・授業料免除
授業料値上げと並行して、東大は学生支援の拡充も発表した。経済的な理由で東大進学を断念する学生を出さないことが目的だ。
授業料全額免除の対象(世帯年収600万円以下)
| 免除区分 | 旧基準(〜2024年度) | 新基準(2025年度〜) |
|---|---|---|
| 全額免除 | 世帯年収 400万円以下 | 世帯年収 600万円以下 |
| 1/4免除(新設) | — | 世帯年収900万円以下・地方出身(下記条件参照) |
全額免除の対象が大きく広がったことで、値上げ後も授業料を実質無料で通える学生の範囲が拡大した。
4分の1免除の対象(地方出身・世帯年収900万円以下)
新たに設けられた1/4免除は、以下のすべての条件を満たす学生が対象となる:
- 世帯年収が900万円以下である
- 高校卒業から2年以内に学部に入学している
- 父母の居住地が東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県以外
ポイント:東大の公式サイトでは「学費免除シミュレーター」(Excelファイル)を提供しており、世帯人数と所得を入力することで免除申請の参考値を事前確認できる。実際の審査には学力基準も必要。進学検討中は必ずシミュレーターを確認したい。
多子世帯の無償化制度(2025年〜)
国の政策として2025年度より、扶養する子どもが3人以上いる世帯の学生は、所得制限なしで授業料と入学料が無償となる高等教育の修学支援新制度の拡充が実施されている。東大もこの対象大学となっている。
東大の学費、私立大学と比べると
国立・私立の4年間学費総額比較
| 大学種別 | 4年間(6年間)の総額 | 東大との差 |
|---|---|---|
| 東京大学(学部4年・値上げ後) | 約285万円 | — |
| 私立大学(文系・4年平均) | 約411万円 | 約126万円多い |
| 私立大学(理系・4年平均) | 約542万円 | 約257万円多い |
| 私立大学(医歯系・6年平均) | 約2,354万円 | 約2,069万円多い |
※私立大学の数値は文部科学省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額調査」をもとに算出。施設設備費を含む。
値上げ後でも、東大(国立大)は私立文系より約126万円安い。20年ぶりの値上げとはいえ、国立大学の学費的優位性は依然として大きい。
値上げの波は他の国立大学にも広がっている
東大の値上げを機に、全国の国立大学で授業料改定の動きが広がっている。2025年度以降に値上げを実施・決定した主な国立大学は以下のとおりだ。
| 大学名 | 年間授業料(2025年度〜) | 国標準額比 |
|---|---|---|
| 東京大学 | 642,960円 | 標準額の120%(上限) |
| 一橋大学 | 642,960円 | 標準額の120% |
| 東京農工大学 | 642,960円 | 標準額の120% |
| 千葉大学 | 642,960円 | 標準額の120% |
| 東京藝術大学 | 642,960円 | 標準額の120% |
| 東京科学大学(理工系) | 635,400円 | — |
| 東京科学大学(医歯系) | 642,960円 | 標準額の120% |
| 電気通信大学 | 値上げ決定(詳細は公式へ) | — |
| 名古屋工業大学 | 値上げ決定(詳細は公式へ) | — |
| 山口大学 | 値上げ決定(詳細は公式へ) | — |
※最新の授業料は各大学の公式サイトで確認を。
現状では首都圏・特定分野の大学で先行して値上げが進んでいるが、今後も追随する大学が増える可能性がある。各大学の値上げ理由には共通して、①運営費交付金の削減、②物価高騰によるコスト増、③教育環境改善の財源確保、が挙げられている。
2026年現在の動向|抗議・停学問題
学生の反発と安田講堂事件
東大の授業料値上げの決定プロセスでは、学生側との対話のあり方をめぐって大きな議論が生じた。
値上げ検討が報道で発覚した2024年5月以降、教養学部学生自治会や「学費値上げ反対緊急アクション」などが反対声明を相次いで発表。大学側は同年6月21日に「総長対話」を開催したが、1回・2時間弱のオンライン開催に限られ、録音・録画が禁止されるなど、学生側は対話の閉鎖性を批判した。
総長対話が終了した同日夜、学生4人が安田講堂に無断で侵入し、制止しようとした警備員を負傷させる事件が発生。東大はこの学生たちに停学処分を下した。
停学処分取り消し訴訟(2026年5月)
2026年に入り、この問題は法廷に持ち込まれた。
- 2026年4月30日:市野川容孝教授ら教職員69名が、停学処分の再審査を藤井輝夫総長に要請する文書を提出
- 2026年5月16日:停学処分を受けた学生が「処分の無効と損害賠償」を求めて東京地裁に提訴。第1回口頭弁論が開かれ、裁判所は「東大の主張が不明確」と指摘
訴訟は2026年5月時点で進行中。詳細は今後の報道や東大新聞オンラインの続報を参照されたい。
この記事のまとめ
- 値上げ後の授業料は年642,960円(旧535,800円)。20%・約10.7万円の増額。
- 学部は2025年度入学生から適用。修士は2029年度予定、博士は据え置き。
- 4年間の総額は約285万円(旧242万円)。私立文系との差は依然100万円超ある。
- 全額免除の対象が世帯年収600万円以下に拡大。地方出身・900万円以下は1/4免除の可能性あり。
- 東大以外の国立大学(一橋・千葉大・農工大等)にも値上げの波が広がっている。
- 2026年5月、停学処分取り消し訴訟が東京地裁で審理中。
よくある質問
学部(学士課程)は2025年度(令和7年度)入学生から適用されます。2024年度以前に入学した在学生には影響しません。修士課程は2029年度入学生から、博士課程は据え置きの予定です。
年額642,960円です。旧額は535,800円で、差額は107,160円(約20%増)。入学料は282,000円で変更ありません。4年間の総額は入学料含めて約285万円になります。
2024年度以前の入学者には影響しません。新授業料が適用されるのは2025年4月以降の新入学者(学部)のみです。在学中に授業料が変わることはありません。
修士課程は2029年度入学生からの値上げが予定されています(現在の修士在学生・2028年度以前入学者は旧額)。博士課程は据え置き(値上げなし)です。
全額免除の主な条件は世帯年収600万円以下(旧400万円以下から拡大)かつ学業優秀と認められること。地方出身(1都3県以外)で世帯年収900万円以下の場合は1/4免除の対象になる可能性があります。詳細は東大公式の「学費免除シミュレーター」や各学部・研究科の窓口で確認してください。
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