「全旅クーポン」という名前は聞いたことがあるけれど、どんな仕組みなのか詳しく知りたい——そんな方のために、旅行業界向けB2B精算サービス「全旅クーポン」の仕組み・種類・受入施設と旅行業者それぞれのメリット・加盟手続きまでをわかりやすくまとめました。
全旅クーポンとは?旅行業界の発券精算システムをわかりやすく解説
全旅クーポンは、株式会社全旅(ZENRYO)が提供する旅行業界専用の「発券精算サービス」です。旅行会社が宿泊施設や観光施設・交通機関などへの支払い手段としてクーポンを発行し、全旅がその精算・代金保証を一括して担う仕組みになっています。
一般の旅行者が使う「楽天トラベルのクーポン」や「じゃらんのクーポンコード」とは根本的に異なるサービスです。あくまでも旅行会社と宿泊施設・観光施設の間のB2B(企業間)決済ツールであることを押さえておきましょう。
株式会社全旅(ZENRYO)について
株式会社全旅は1973年4月に設立された旅行業専門会社です。一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)の事務受託会社として誕生し、1976年には全国統一クーポン「全旅協クーポン」の運営を開始。その後2002年に現在の株式会社全旅に合併して現在に至ります。
東京・銀座に本社を置き、観光庁長官登録旅行業第1585号を取得しています。半世紀以上にわたって旅行業界の決済インフラを支えてきた実績は、受入施設や旅行会社にとって大きな安心材料のひとつです。
全旅クーポンの3種類(宿泊券・観光券・船車券)
全旅クーポンは用途に応じて3種類に分かれています。
また、クーポンの形態は大きく2種類に分かれます。券面金額表示クーポン(A4サイズで金額が印字されたもの)と、バウチャー券(金額が記載されない形式)です。どちらを使うかは旅行会社と施設の取り決めによります。
一般消費者向けの旅行クーポンとは何が違う?
全旅クーポンは旅行業者専用のB2Bサービスのため、一般旅行者がスマホアプリや旅行サイトで使う「割引クーポンコード」とは仕組みも使う人も全く異なります。
一般旅行者向けクーポンをお探しの方へ
旅行先の宿や体験の割引クーポンをお探しの場合は、楽天トラベルやYahoo!トラベル、全国旅行支援の地域クーポンなどをご確認ください。以下の記事も参考にしてみてください。
全旅クーポンの仕組みと精算フロー
全旅クーポンがどのように機能するか、お金と情報の流れを理解しておくことで、受入施設・旅行業者どちらの立場でも活用しやすくなります。
三者間(旅行会社→全旅→受入施設)の資金の流れ
全旅クーポンの精算は、旅行会社(送客会員)・株式会社全旅・受入施設(受入会員)の三者間で行われます。
旅行者(消費者)は旅行会社からクーポン(またはバウチャー)を受け取り、施設でサービスを利用します。施設はクーポンを受け取るだけで、代金の請求は全旅が一括して行います。旅行会社が万が一倒産しても、全旅が100%代金を保証する仕組みになっているため、施設側は安心してクーポンを受け入れることができます。
発券から入金までのスケジュール
精算サイクルは以下の通りです。受入施設も旅行業者も、月次で動くスケジュールを把握しておくと経理処理がスムーズになりますよ。
| 立場 | 対象期間 | 入金・締め |
|---|---|---|
| 受入施設(入金される側) | 毎月1日〜末日に利用されたクーポン分 | 翌月末日に全旅から支払い(月1回) |
| 旅行業者(支払う側) | 毎月21日〜当月20日に発券した分 | 翌月20日入金締めで全旅へ支払い |
受入施設にとって「翌月末日に確実に入金される」という予測可能性は、資金繰り管理を大幅に楽にしてくれる大きなメリットです。
券面金額表示クーポンとバウチャー券の違い
全旅クーポンには2種類の形態があります。
- 券面金額表示クーポン(A4サイズ印刷):クーポンに利用金額が印字されており、その額面で精算されます。金額が明示されているため、施設スタッフがその場で確認しやすいのが特長です。
- バウチャー券(金額非表示):クーポン上に利用金額が記載されない形態です。精算金額は別途「金額調整依頼書」等で全旅に通知する方式になります。旅行パッケージなど金額を開示しない場合によく使われます。
精算事務費(1.5%)の仕組み
全旅クーポンの利用にかかる費用は、精算事務費として券面金額の1.5%のみです。この精算事務費は受入施設側が負担します(受入金額から差し引かれる形)。
| 費用項目 | 金額 | 負担者 |
|---|---|---|
| 精算事務費(宿泊券・観光券・船車券) | 券面金額の1.5% | 受入施設 |
| 精算事務費(業務用クーポン) | 無料 | — |
| 登録料・年会費 | 無料(2024年11月〜) | — |
| 振込手数料 | 無料(全旅負担) | 全旅が負担 |
業務用クーポンは精算事務費が無料
観光バスや貸切交通など業務用途のクーポンは精算事務費が無料です。法人間の業務手配が多い旅行会社や施設には特にお得な選択肢になりますよ。
受入施設が全旅クーポンに加盟するメリット
「全旅クーポンに加盟するかどうか迷っている」という施設担当者の方に、加盟のメリットを整理しました。2024年11月から登録料・年会費が完全無料になったため、これまで以上に加盟のハードルが下がっています。
旅行業者(送客会員)として入会するメリット
旅行会社にとって全旅クーポン最大のメリットは、手配したすべての施設への支払いをまとめて月次一括後払いできる点です。施設ごとに個別に精算書を作成・送付・入金確認する業務が不要になり、経理担当者の事務負担を大きく削減できます。
全国約9,201軒の施設に月次一括後払い対応
入会することで、2024年度時点で9,201軒の受入会員施設に対してクーポンでの支払いが可能になります。ホテル・旅館から観光施設・交通機関まで幅広くカバーしており、旅行プランを組む際の選択肢が大きく広がります。
また、精算サイクルは「毎月21日〜当月20日発券分 → 翌月20日入金締め」に統一されており、どの施設に対する支払いも同じタイミングで一本化されます。施設ごとに支払い期日を管理する手間がなくなるため、月次経理がシンプルになりますよ。
大手旅行商品の代売精算にも活用できます
全旅クーポンは自社企画旅行だけでなく、JTBや日本旅行など大手旅行会社の旅行商品を代理販売する際の施設精算にも利用できます。代理販売時の施設支払いをクーポン1枚で完結させることで、精算業務の複雑さを大幅に解消できます。
ANTA-NETで発券・管理を一元化
入会後はANTA-NETにアクセスでき、クーポンの発券・発券状況の確認・精算管理をオンラインで一元管理できます。紙での発券も可能ですが、ウェブシステムを活用することで経理事務の効率が大幅に上がります。
入会に必要な預託保証金について
旅行業者として入会する際は、預託保証金(20万円〜200万円)が必要です。月次発券限度額は預託保証金の30倍になります。詳細は申込時に株式会社全旅へご確認ください。
加盟・入会手続きの流れ
受入施設の加盟手続きステップ
受入施設として加盟する手続きはシンプルで、申込から最短約1〜2週間でスタートできます。
公式サイト(zenryo.co.jp)の申込フォームに施設情報・担当者情報を入力します。特別な設備要件などの条件はなく、審査があります。
申込内容をもとに株式会社全旅が審査を行います。審査期間の目安は約1〜2週間です。
審査通過後、ANTA-NETのログインIDとパスワードが発行されます。発行後はすぐに施設情報の登録・PR掲載が可能になり、旅行会社からのクーポン発券受け入れが開始できます。
全旅クーポンを使う旅行会社がクーポンを発券すると、加盟施設の担当者にメールで通知が届きます。ANTA-NETで発券状況をいつでも確認できます。
旅行業者の入会手続きステップ
旅行業者として入会する際は、書類の準備が必要になります。事前に確認しておきましょう。
公式サイトの申込フォームに会社情報を入力して送信します。自動返信メールに入会申込書(PDF)が添付されます。
PDFを印刷し、代表者の署名と実印での押印を行って郵送します。
法人の場合は、法人登記簿(現在または履歴事項全部証明書)・印鑑証明書・旅行業協会保証社員証明書類・連帯保証人届出書が必要です。詳細は公式の入会申込ページでご確認ください。
審査通過後、預託保証金を振り込むことで入会が完了します。月次発券限度額は預託保証金の30倍です。
よくある質問(FAQ)
全旅クーポンは旅行会社(送客会員)と宿泊施設・観光施設などの受入施設の間で使われるB2B専用の業務用精算ツールです。一般の旅行者がご自身で発行・購入することはできません。旅行会社がお客様の旅行プランに全旅クーポンを組み込んでご提供する形になります。一般旅行者向けの旅行割引クーポンとは根本的に異なるサービスです。
精算事務費は券面金額の1.5%です。ただし業務用クーポン(観光バス・貸切交通など)は精算事務費が無料となっています。なお2024年11月より登録料・年会費・振込手数料はすべて無料に変更されました。
業務用クーポンは、観光バスや貸切交通など法人間の業務取引に使われる観光券の一種です。一般の観光券と異なり精算事務費が無料で、旅行業者が業務上手配する交通・施設との決済に活用されます。
ANTA-NETは株式会社全旅が運営するウェブシステムです。旅行会社は全旅クーポンの発券・発券状況の管理をオンラインで行えます。受入施設側では発券状況の確認・施設情報の変更・PR情報やカタログの掲載(無料)・発券通知メールの設定などが可能です。
受入施設の加盟については、2024年11月より登録料・年会費ともに完全無料になりました。振込手数料も全旅が負担します。費用が発生するのは精算事務費(券面金額の1.5%)のみです。旅行業者の入会については、預託保証金(20万円〜200万円)が必要です。
はい、全旅クーポンには「100%全額保証制度」があります。1998年より開始したこの制度により、万が一送客会員(旅行会社)が倒産した場合でも、受入施設への支払いは全旅が100%保証します。この保証制度が全旅クーポン最大の特徴のひとつです。
まとめ
全旅クーポンは1973年創業の株式会社全旅が運営する、旅行業界向けの発券精算サービスです。宿泊券・観光券・船車券の3種類があり、100%全額保証・発券精算方式・全国ネットワークという3つの柱で旅行業界の決済インフラを支えています。
この記事のポイント
- ✓ 全旅クーポンはB2B専用の業務用精算サービス。一般旅行者が使う割引クーポンとは異なる
- ✓ クーポン3種類:宿泊券・観光券(業務用含む)・船車券。形態は券面金額表示とバウチャー券の2種類
- ✓ 受入施設は精算事務費1.5%のみ。2024年11月より登録料・年会費が完全無料に
- ✓ 100%全額保証制度で旅行会社倒産時も受入施設への支払いを全旅が保証
- ✓ 受入施設の加盟手続きはWEB申込→審査(約1〜2週間)→ANTA-NET ID/PW発行
- ✓ 旅行業者の入会には預託保証金(20万〜200万円)が必要
- ✓ 2024年度実績:取扱高787.74億円・送客会員3,212社・受入会員9,201軒
旅行業界で働く方にとって、全旅クーポンの仕組みを理解しておくことは業務の基礎知識のひとつです。宿泊施設や観光施設を運営されている方は、加盟の検討材料としてこの記事が参考になれば幸いです。
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