「セールアンドリースバックって何?」「うちの会社でも使えるの?」——そんな疑問をお持ちの経営者・財務担当者の方へ。この記事では、セールアンドリースバックの仕組みから、メリット・デメリット、会計処理(2027年新リース会計基準への対応含む)、向いている企業の特徴まで、ひとつの記事で体系的に解説します。

この記事のまとめ

セールアンドリースバックとは?

セールアンドリースバック(Sale and Leaseback)とは、会社が所有する不動産・設備などの資産を売却しながら、同時に賃貸借契約を結んで同じ資産を継続利用する取引スキームです。最大のポイントは、「手元に資金を調達しつつ、事業拠点や設備は移転なしでそのまま使える」こと。売却代金は借入金と異なり返済義務がないため、資金繰りの改善や事業投資に自由に活用できます。

セールアンドリースバックとは何か?基本的な仕組みを解説

セールアンドリースバックの基本的な仕組み

セールアンドリースバック(S&LB)とは、自社で所有する資産(主に不動産・設備・機械など)を第三者に売却し、その直後に同じ資産をリース物件として借り受ける取引です。1930年代に米国でチェーンストアを展開する小売業者が、店舗の土地を購入・建設後に売却し、長期リース契約で使い続けたことが起源とされています。現在は不動産だけでなく、車・航空機・製造設備など幅広い資産に活用されています。取引の流れをシンプルに整理するとこうなります。

① 売却
会社が所有する不動産・設備を買手(投資家・リース会社など)に売却。まとまった売却代金を一括取得
② リース契約
売却と同時にリース(賃貸借)契約を締結。売手(借手)は毎月のリース料を支払いながら同じ資産を使い続ける
③ 継続使用
所有権は買手に移るが、実際の業務は変わらず継続。移転コストや業務中断がゼロ

リースバックとの違い

「リースバック」と呼ぶ場合、個人の自宅を売却して賃貸で住み続けるスキーム(個人向けリースバック)を指すことが多いです。一方「セールアンドリースバック」は主に法人が事業用資産に活用するスキームであり、不動産に限らず設備・機械も対象になります。本記事では法人向けのセールアンドリースバックを解説します。

他の資金調達手段との違い

「銀行融資を受ければいいのでは?」と思う方も多いと思います。セールアンドリースバックが他の手段とどう違うかを整理しておきましょう。

手段 所有権 返済義務 用途制限 継続使用
セールアンドリースバック 移転する なし(リース料は発生) なし ○(リース料支払いで継続)
銀行融資(借入) 保持 あり(元本+利息) あり(使途報告が必要な場合も)
不動産担保ローン 保持 あり(元本+利息) あり
通常の不動産売却 移転する なし なし ×(退去必要)

最大の特長は、返済義務なしで資金調達できながら、資産の利用は継続できる点です。銀行融資では調達できない会社でも、資産さえあれば活用できるケースがあります。

セールアンドリースバックのメリット:なぜ企業に選ばれるのか

資金調達できる(売却代金に返済義務なし)

セールアンドリースバック最大のメリットは、資産売却代金の返済義務がないことです。銀行融資や担保ローンと異なり、元本返済のキャッシュアウトが生じません。調達した資金の使途も自由で、設備投資・運転資金・M&A資金など経営判断で自由に活用できます。

事業拠点・設備をそのまま継続利用できる

通常の不動産売却では移転が避けられませんが、セールアンドリースバックでは売却後もリース契約で同じ場所・設備を使い続けられます。移転コストや工事費、業務中断のリスクがゼロなのは大きなメリットです。製造業の工場、小売業の店舗、オフィスビルなど、移転が困難な事業用資産に特に有効です。

維持管理コストをオフロードできる

所有者でなくなるため、固定資産税・建物管理費・保険料・修繕費が原則として不要になります。これらのコストは規模や物件によっては年間数百万円〜数千万円に上ることもあり、キャッシュフローの改善効果は売却代金だけにとどまりません。

💡 知っておきたい

固定資産税の負担者は「毎年1月1日時点の所有者」です。売却のタイミングによっては、当年の固定資産税が売却後も発生する場合があります。売買契約書で精算方法を確認しておきましょう。

財務体質の改善(ROA向上・負債圧縮)

現行基準(旧基準)でオペレーティングリース取引に分類された場合、リース資産・リース負債を貸借対照表に計上しないオフバランスが可能です。総資産が減少することでROA(総資産利益率)が改善し、財務指標の向上が期待できます。財務体質の改善を目的として、上場企業や大企業が戦略的に活用する例も多くあります。

⚠️ 注意(2027年以降)

2027年4月から施行される新リース会計基準(企業会計基準第34号)では、オペレーティングリースのオフバランスが原則廃止されます。上場企業・大会社は早期に影響を試算しておく必要があります。詳細はこの記事の「会計処理」セクションで解説しています。

成長戦略のための資金調達にも使える

かつては「資金繰り悪化の最終手段」というイメージが強かったセールアンドリースバックですが、近年は成長投資のための戦略的な資金調達手段としても注目されています。好立地の物件を取得後にS&LBで流動化しながら出店を加速する小売業、機材のS&LBでキャッシュを温存しながら成長するLCC(格安航空会社)など、その活用シーンは広がっています。

セールアンドリースバックのデメリット・注意すべきリスク

売却価格が市場価格より低くなりやすい

セールアンドリースバックでの不動産売却価格は、一般的に市場価格の60〜80%程度が相場とされています。買取側が利回りを重視するため、仲介市場での売却より低くなりがちです。

なぜ低くなるのか?買手(投資家・リース会社)は、物件を「収益物件」として購入します。買取価格を下げるほど利回り(リース料÷買取価格)が上がるため、できるだけ安く購入しようとするからです。

「まとまった資金を得られる代わりに、将来の売却収益を一部前倒しで手放す」という認識で臨むことが大切です。市場価格に近い条件を引き出すには、複数の業者から見積もりを取って比較することをおすすめします。

長期にわたるリース料の負担

売却後は毎月のリース料が発生します。リース期間が長いほど累計コストが膨らむため、「売却で得た資金<将来支払う総リース料」になるリスクがあります。とくに物件価値が上昇した場合に割高感が生じやすいため、リース期間と条件の設定は慎重に行いましょう。

資産の所有権を失う

売却によって所有権は買手に移ります。そのため、建物の改修・建て替え・処分はオーナーの許可なしにできないことになります。事業展開上のフレキシビリティが下がることを理解したうえで判断してください。また、リース期間中に経営状況が改善しても「資産を取り戻せる」とは限りません。

デメリットが顕在化しやすいケース

次のような状況では、デメリットのほうが大きくなる可能性があります。慎重に検討してください。

  • !今後の不動産価値上昇が見込まれる物件(売却後に地価上昇で損失感が生じる)
  • !リース期間終了後も確実に継続利用したい場合(再契約の保証がない)
  • !大規模な改修・建て替えを近い将来予定している場合
  • !資金繰りの改善が一時的にとどまる可能性がある場合(リース料支払いが後の財務を圧迫)

セールアンドリースバックの会計処理:現行基準と2027年新基準の違い

セールアンドリースバックは売却取引とリース取引の両方を含むため、会計処理は通常の不動産売却より複雑です。現行基準(旧基準)と2027年から適用される新リース会計基準の2つに分けて説明します。

現行基準での処理:まずリースの種類を判定する

現行の会計基準(企業会計基準第13号)では、リース取引を「ファイナンス・リース」「オペレーティング・リース」「金融取引」の3パターンに分けて処理します。この区分によって会計処理が大きく異なります。

⚠️ 第3のパターン:「金融取引」として処理されるケース

売却価格が明らかに低すぎる・買戻し条項がある・取引の実質が担保付き借入とみなされるケースでは、税務当局だけでなく会計上も「金融取引」として処理することが求められる場合があります。この場合は売却を認識せず、受取額を借入金として計上します。契約設計の段階で専門家に確認してください。

リースの種類 主な判定基準 会計上の取り扱い
ファイナンス・リース 解約不能+リース期間中にほぼ全額を支払う取引 リース資産・リース債務をオンバランス(BSに計上)
オペレーティング・リース 上記以外のリース取引 リース料を支払い時に費用計上。オフバランス(BSに計上しない)

現行基準(旧基準)でのファイナンス・リース処理

ファイナンス・リースに分類された場合の仕訳例です。「建物の帳簿価額1億円・減価償却累計額6,000万円の建物を3,000万円で売却し、そのままリースバック(月額30万円)」というケースで見てみましょう。

💡 ファイナンスリースの「損益繰延」について

ファイナンスリース取引に該当する場合、売却時に生じた売却損益は「長期前払費用(または長期前受収益)」として繰り延べ、リース期間にわたって償却します。これは「売却+リースの一体取引」という経済実態を反映した処理です。一方オペレーティングリースの場合は、売却損益を売却時に一括計上します。

【売却時】

借方金額貸方金額
預金30,000,000建物100,000,000
減価償却累計額60,000,000
固定資産売却損10,000,000

【リース開始時】

借方金額貸方金額
リース資産29,000,000リース債務29,000,000

※ リース資産・リース債務はリース料総額の割引現在価値で計上

【毎月のリース料支払い時】

借方金額貸方金額
リース債務(元本部分)——預金300,000
支払利息(利息部分)——

※ 元本・利息の按分は利息法で計算

現行基準(旧基準)でのオペレーティング・リース処理

オペレーティング・リースの場合、売却時の処理は同様ですが、リース後の処理はシンプルです。毎月のリース料をそのまま費用計上するだけです。

【毎月のリース料支払い時】

借方金額貸方金額
リース料(支払家賃)300,000預金300,000

オペレーティングリースではリース資産・リース債務をBSに計上しないため、オフバランス効果(ROA改善・負債比率低下)が得られます。これが現行基準でのセールアンドリースバックの財務戦略的な魅力でした。

2027年適用の新リース会計基準での処理

2027年4月より強制適用(上場企業・大会社)

2024年9月に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用されます(2025年4月以降から早期適用可)。最大の変更点は「オペレーティングリースのオフバランスが廃止される」ことです。

比較項目 現行基準(旧基準) 新リース会計基準(2027年〜)
リース区分 ファイナンス / オペレーティングの2分類 区分廃止。すべて一律に処理
バランスシート計上 オペレーティングはオフバランス可 原則すべてオンバランス(使用権資産+リース負債)
損益計算書 オペレーティング:リース料を費用計上 減価償却費+支払利息に分かれる
強制適用対象 上場企業・大会社・会計監査人設置企業(中小企業は対象外)
例外(オフバランス可) 短期リース(12ヶ月以内)・少額リース(総額300万円以下)

新基準適用後は、セールアンドリースバックで生じるリースバックについて「使用権資産」と「リース負債」を計上するオンバランス処理が原則となります。これにより、かつてのオフバランス効果(総資産の圧縮・ROA改善)は基本的に享受できなくなります

⚠️ 財務指標への影響に注意

新基準では総資産・総負債が同時に増加するため、自己資本比率が低下する可能性があります。金融機関との融資契約に「財務制限条項(コベナンツ)」が含まれている場合は、新基準適用前に金融機関と事前協議を行うことをおすすめします。

💡 日本新基準とIFRS16の差異

日本の新リース会計基準とIFRS第16号にはセールアンドリースバックでの売却益認識方法に違いがあります。日本新基準は売却益を売却時に全額認識する一方、IFRS16は売却益の一部のみ認識して残りをリース期間に配分します。IFRS適用会社は注意が必要です。

セールアンドリースバックが向いている企業はどんな会社?

こんな企業に向いている(チェックリスト)

以下の項目に複数あてはまる場合、セールアンドリースバックを検討する価値があります。

  • まとまった資金が必要だが、借入余力がない(または借入を増やしたくない)
  • 不動産や設備を所有しているが、業務上の移転はできない
  • 資金使途を自由に決めたい(銀行融資のように制限されたくない)
  • 固定資産の維持管理コストを圧縮したい
  • 財務指標(ROAや自己資本比率)を改善したい(※現行基準のみ)
  • 新規投資・M&A資金を機動的に調達したい

活用が多い具体的シーン

製造業
  • 工場・土地を売却し長期リースバック(20年契約が多い)
  • 調達資金を設備更新・新製品開発に活用
流通・小売業
  • 好立地の物件を購入→S&LBで流動化→新規出店資金に
  • REIT等への売却で短期リースバックが多い
航空・輸送業
  • 航空機・車両のS&LBでキャッシュを温存
  • LCC(格安航空会社)の低コスト経営の基盤
資金繰り改善
  • 借入返済に追われているが不動産は保有している企業
  • 他の融資が困難だが資産は持っているケース
✅ 編集部コメント

「成長型」と「救済型」の2パターンがあります。資金繰り悪化のいわゆる「最後の切り札」としてだけでなく、成長投資のスピードを上げるための戦略的ツールとして活用するケースが近年増加しています。自社の状況がどちらのパターンに近いかで、交渉力や条件も変わってきます。

セールアンドリースバック実施のポイント

売却先・リース条件の交渉ポイント

  1. 1
    複数の買手候補から見積もりを取る

    買取価格は業者によって差が出ます。1社だけで決めず、不動産会社・リース会社・不動産投資法人など複数から見積もりを取り比較しましょう。市場価格の60〜80%が相場ですが、交渉次第では条件が改善されるケースもあります。

  2. 2
    リース期間と中途解約条件を確認する

    リース期間中の中途解約には高額な違約金が発生することがあります。事業計画に合ったリース期間の設定と、解約条件の詳細を契約前に必ず確認してください。

  3. 3
    買戻し条項・優先買取権の交渉

    「将来的に買い戻す可能性がある」場合は、買戻しオプションや優先交渉権を契約に盛り込んでおくと安心です。ただし、買戻し条項の設計次第では税務上「売買ではなく担保付き借入」と認定されるリスクもあるため、専門家に相談の上で設計してください。

  4. 4
    改修・原状回復の条件を明確にする

    リース中の改修ニーズ(内装変更・設備増設など)や、リース終了時の原状回復義務について契約書に明記されているか確認してください。

税務上の注意点

⚠️ 税務は専門家への相談を強くおすすめします

セールアンドリースバックは税務上の取り扱いが複雑で、契約設計によっては予期しない課税が発生するリスクがあります。実施前に必ず税理士・公認会計士に相談してください。

特に以下の2点は事前に確認が必要です。

  • ! 消費税の一時的負担:建物の売却代金には消費税が課税されます(土地は非課税)。売却時に多額の消費税を一括で支払う一方、リース料の消費税は分割で還付されるため、売却直後に大きなキャッシュアウトが生じます。資金繰り計画に組み込んでおきましょう。
  • ! 税務否認(実質的な金銭貸借とみなされるリスク):売却価格が市場価格と大きく乖離していたり、形式的な買戻し条項が設定されている場合、税務当局が「実質的な金銭貸借」と認定することがあります。この場合、売却益・売却損が否認され借入金として処理されます。契約の経済的実質が適切であることを専門家に確認してもらいましょう。

よくある質問

セールアンドリースバックと銀行融資はどちらがよいですか?

一概にどちらが良いとは言えません。銀行融資は所有権を維持したまま資金調達でき、融資条件次第ではコストが低い場合もあります。セールアンドリースバックは返済義務がなく、資金使途が自由で、銀行からの借入が困難な場合にも活用できます。自社の財務状況・資産の価値・資金使途・将来の事業計画を総合的に比較して判断してください。財務担当者や専門家に試算してもらうことをおすすめします。

対象になる資産はどんなものですか?

不動産(オフィスビル・工場・店舗・倉庫・土地など)が最も一般的ですが、それ以外にも航空機・鉄道車両・建設機械・IT機器・医療機器なども対象になります。「売却後にリースバックして継続利用できる資産」であれば基本的に対象です。ただし買手が見つかることが前提のため、実際に取引できる資産かどうかは買手候補に確認が必要です。

2027年の新リース会計基準はすべての会社に影響しますか?

強制適用の対象は、上場企業・大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)・会計監査人を設置している企業です。多くの中小企業は強制適用の対象外ですが、任意で早期適用することは可能です。自社が対象かどうか不明な場合は、顧問税理士・公認会計士に確認してください。

売却価格はどうやって決まりますか?

買手が投資利回りを基準に価格を決めるため、一般の市場取引より低くなる傾向があります。相場は市場価格の60〜80%程度ですが、物件の立地・築年数・リース条件(期間・賃料)・市場環境によって変わります。複数の業者から見積もりを取って比較することが、条件改善の有効な手段です。

会計処理はどの専門家に相談すればよいですか?

会計処理については公認会計士・税理士、税務については税理士への相談をおすすめします。リース契約の内容によってファイナンスリース・オペレーティングリースの分類が変わり、会計処理も大きく異なります。また2027年の新リース会計基準への対応も専門家のアドバイスを得ながら準備することをおすすめします。

まとめ:セールアンドリースバックを検討するポイント

この記事のまとめ

  • セールアンドリースバックは、資産を売却しながらそのまま利用を継続できる資金調達スキーム。売却代金の返済義務はなく、資金使途も自由
  • メリットは「資金調達」「継続利用」「維持管理コスト削減」「財務指標改善」。デメリットは「売却価格が市場価格より低くなる傾向(相場60〜80%)」「長期リース料の負担」「所有権喪失」
  • 会計処理は現行基準でファイナンスリース・オペレーティングリースの2分類。2027年4月からの新リース会計基準ではオペレーティングリースのオフバランスが原則廃止
  • 2027年の新基準は上場企業・大会社・会計監査人設置企業に強制適用。中小企業は対象外(任意適用は可)
  • 消費税の一時的負担・税務否認リスクなど税務上の注意点があり、実施前に税理士・公認会計士への相談が必須
  • 資金繰り改善だけでなく、成長投資・M&A資金調達など戦略的な活用も増えている

セールアンドリースバックは、適切に活用すれば資金調達と事業継続を両立できる有効な手段です。ただし、売却価格の条件・リース料の長期負担・会計処理・税務リスクなど考慮すべき点が多いため、複数の業者への見積もり取得と、税理士・公認会計士への相談を組み合わせて慎重に判断することをおすすめします。

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